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マイケル・ポーターが語る、IoT時代に取り残される“人”の存在製造業IoT(1/3 ページ)

PTCジャパンのユーザーイベント「PTC Forum Japan 2016」の特別講演に米国の著名経済学者であるマイケル・ポーター氏が登壇。米国PTCのCEOであるジェームズ・ヘプルマン氏とともに「『接続機能を持つスマート製品や拡張現実(AR)』が変えるIoT時代の競争戦略」をテーマにIoT時代を勝ち抜くために必要な要件などについて紹介した。

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 PTCジャパンのユーザーイベント「PTC Forum Japan 2016」の特別講演に米国の著名経済学者であるマイケル・E・ポーター(Michael E. Porter)氏が登壇。米国PTCのCEOであるジェームズ・E・ヘプルマン(James E. Heppelmann)氏とともに「『接続機能を持つスマート製品や拡張現実(AR)』が変えるIoT時代の競争戦略」をテーマにIoT(モノのインターネット)時代を勝ち抜くために必要な要件について紹介した。

 ポーター氏は、1995年にPTCの取締役に就任し20年にわたって同社の取締役を務めてきた。2015年に退任後も戦略アドバイザーとしての立場で同社に関わりつづけており、ヘプルマン氏と共同で米ハーバードビジネスレビュー誌にIoTによる産業の変化についての論文を3本寄稿している※)。今回は、これらの論文で発表した内容から、IoTにおける製品の変化や組織の変化、人の働き方の変化について考えを述べた。

※)関連記事:連載「マイケル・ポーターのIoT時代の競争戦略」

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経済学者のマイケル・ポーター氏

IoTがもたらした第3の変革の波

 ポーター氏とヘプルマン氏は、IoT化を実現する製品として「接続機能を持ったスマート製品(スマートコネクテッドプロダクト)」を定義。これらが企業戦略を大きく変えるドライバーとなると位置付けている。そして、その背景となるのが、ITによる競争の変化の波である。

 ポーター氏は「IoTによりITは第3のフェーズに入ったといえる。最初はメカから電気、電気からITへと変わってきたように、手作業を自動化するという役割が中心となっていた。次に、さまざまなプロセスを跨いで連携することが可能となった。例えば、SCM(サプライチェーンマネジメント)やCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント、PLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)などがこれらに当てはまる。こうした取り組みは、企業内の活動を大きく支援してきたといえる」と述べる。

 IoTによる第3の波は企業内だけにとどまらない点が特徴だとポーター氏は強調する。「IoTにより製品が『接続機能のあるスマート製品』化することにより、製品の中にさまざまな機能が組み込まれるようになる。製品からバリューチェーンを回ってデータが戻ってくる動きが可能となった。これらの動きにより、開発が変わり、製品が変わり、ビジネスモデルが変わることになる」とポーター氏は語る。

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ITが生み出した競争の第3の波(クリックで拡大)出典:PTC

 こうした仕組みを実現するためには、どういうシステムが必要になるのだろうか。ポーター氏は接続機能を持つスマート製品の機能は4段階で進化すると述べている。

 「接続機能を持つスマート製品は、モニタリング、制御、最適化、自動化の4つの段階で進化する。稼働監視などを行い、それらのデータを活用して制御を行う。その後、制御を組み合わせて最適化する。最終的には全てを自動化する形となる」(ポーター氏)

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接続機能を持つスマート製品の機能の発展(クリックで拡大)出典:PTC

 さらに製品の仕組みも徐々に変化する。ポーター氏は「メカや機械の時代にはもともと製品単体だったが、スマート製品化し接続機能を持つようになると『製品システム』として周辺の機器を組み合わせて機能する形になる。そしてこうしたシステム同士を最適に組み合わせた複合システム化へと進む」と製品の変化について述べている。

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接続機能を持つスマート製品の機能の発展(クリックで拡大)出典:PTC

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