インダストリー4.0の追い風に乗るベッコフ、制御とITの融合を先進:スマートファクトリー
ドイツのベッコフオートメーションは、PCベース制御技術を中心に工場オートメーションを推進。ITを活用した制御を早くから目指してきたポジションを強みとし、インダストリー4.0などスマートファクトリー化が進む市場で存在感を高めている。
インダストリー4.0などIoT(モノのインターネット)を活用した製造業革新の動きが広がる中、IT(情報技術)とOT(制御技術)の融合が大きな注目を集める中、ドイツのBeckhoff Automation(以下、ベッコフ)が存在感を高めている。同社は30年前からPCベース制御の普及拡大を推進してきた。まさにITとOTの融合に取り組んできた先進性を生かし、新たな技術開発を積極的に進めている。
ベッコフの取り組みについて、同社の海外営業本部長でビジネス開発担当のカイ・リスタウ(Kai Ristau)氏、エリアセ−ルスマネージャのトビアス・フーバー(Tobias Huber)氏に話を聞いた。
30年前からオートメーションとITの融合する世界を想定
インダストリー4.0を中心に製造業のIoT活用の動きは加速している。こうした動きに対しベッコフでは「既に30年前から志向してきた」(リスタウ氏)と述べる。
リスタウ氏は「ベッコフはもともとPCベースの産業制御を目指して創業した企業であり、当初からオープン化やデジタル化の動きに取り組んできた。インダストリー4.0やIoTもデジタル化の動きの1つであり、オートメーション技術とITの融合である。こうした動きを当初から見据えてきたため、さまざまな製品や技術、ノウハウなどが今の流れに生きている」と手応えについて語る。
またフーバー氏も「インダストリー4.0の動きはもちろん大きな追い風になっている。オープン化の流れの中でPCベース制御へのニーズも高まっている他、EtherCAT関連製品など、インダストリー4.0の動きに必要な中心となる技術を保有している他、いくつかの分野でテクノロジーリーダシップをとれていることは大きい」と現状について述べている。
実際にベッコフではインダストリー4.0のさまざまなクラスターにも参加している。ドイツのインダストリー4.0は、「プラットフォーム インダストリー4.0」という産官学の複合組織が中心となって運営しているが、実際にさまざまな技術開発や実証などが行われているのは各地域におけるクラスターである。ベッコフはそのクラスターで最大規模の「It's OWL」の中心メンバーともなっており、主導的な立場をとっている。
リスタウ氏は「2011年にインダストリー4.0のコンセプトが発表されてから、さまざまな文書を読んで動きを見定めるとともに、目指す姿を実現する製品開発などを準備してきた。1〜2年前までは『インダストリー4.0は何か』というような反応が多かったが、多くの国家間イニシアティブの活動などを経て、2016年は実践的な取り組みが広がってきており、技術的には実際に活用できる段階に入ってきている」とインダストリー4.0の現状について述べている。
インダストリー4.0の流れに答える先進的な製品を次々にリリース
こうした流れの中でベッコフでは先進的な製品を次々にリリース。2015年に開発を発表しEtherCAT Technology Group(ETG)でEtherCAT仕様として標準化が進んでいる「EtherCAT P」もその1つである。EtherCAT Pは、1本のケーブルで通信だけでなく電源供給も可能としたことが特徴で、2系統が必要だった従来に対し、省線化が実現でき、コストの削減と設置スペースの削減が可能となる。ベッコフではこのEtherCAT Pデバイスの実装を簡単に開始できるようにスレーブ実装のガイドライン(アプリケーションノート)をETGメンバー向けに公開している。
また2016年11月に開催されたドイツの制御技術の展示会「SPS IPC Drives 2016」では、Intel Xeon Dプロセッサーを搭載する最大12コアの組み込み用PC「CX2000」シリーズや、82×82×40mmというコンパクトで省スペースな産業用PC「C6015」を発表した。「メニーコアの利点は処理能力による速度という点だけでなく、機能を割り振れるという点がある。今後工場内のスマート化が進み、さまざまな情報を現場で取得したり、処理したりすることが必要になる。こうした状況に対し、いちいちハードウェアを追加するのではなく、コアごとに機能を割り振ることで柔軟に対応できるという点がメリットとして挙げられる」とリスタウ氏は述べている。
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