インダストリー4.0を追い風にPC制御オートメーションの領域を拡大するベッコフ:ハノーバーメッセ2015
ドイツのBeckhoff Automationは、ハノーバーメッセ2015において、プレスカンファレンスを開催。EtherCATなどを含めPCベースオートメーションの領域拡大の流れの下、順調な成長を続けていることを紹介した。
ドイツのBeckhoff Automation(以下、Beckhoff)は2015年4月16日(現地時間)、ハノーバーメッセ2015(2015年4月13〜17日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、プレスカンファレンスを開催。EtherCATなどを含めPCベースオートメーションの領域拡大の流れの下、順調な成長を続けていることを紹介した。
ドイツ北西部のVerl(フェアル)に本社を置くBeckhoffは、全世界で約2800人の従業員を抱えるドイツのMittelstand(ドイツの枠組みでの中堅企業)だ。日本を含め35カ国に現地法人を置き、パートナーでの営業展開を含めると70カ国でビジネスを展開している。
「PCベースの産業用オートメーション」を主力に据える同社は、PCベースのオープンな自動制御システムを提供しており、産業用PCから各種フィールドバス対応I/O、ドライブテクノロジー、制御ソフトウェアなどの製品を展開。製品面でのPCを中心としたオープン戦略とともに、導入分野が多種多様で偏りが少ないところが継続的な成長につながっているという。
実際に多少の凸凹はあるものの、売上高の規模は右肩上がりの成長を続けており、2014年は前年比17%増の5億1000万ユーロに達しているという。同社創業者で社長のハンス・ベッコフ(Hans Beckhoff)氏は「1つのポイントが『長期間』を視野に含めた戦略だ。技術開発も中長期を見据えて行っている他、顧客との関係も長期に継続することを考えている。当社は創業35年になるが、最初の顧客企業とは現在も関係が続いている」と同社の特徴について語る。
PCベースオートメーションの領域は拡大
産業用オートメーションの領域について、ベッコフ氏は「コンピューティングパワーの進化でより多くの機能を1つのPCで実現できるようになり、PC制御による領域はますます増えていくことが考えられる。今後インダストリー4.0の動きが加速しIoT(モノのインターネット)デバイスなどの制御が必要になった時に新たなハードウェアで管理するのは負担が大きい。PCベースでのコントロールが主流になるだろう」と述べている。実際に同社がPC制御の対象とする領域は拡大を進めており、新たに状態監視や解析領域におけるPC制御にも取り組むという。
この流れの中でベッコフ氏は「オープンであることが重要だ」と強調する。同社は基本的にオープン戦略を中心としており、PCについては米国マイクロソフトとの長期のパートナーシップを組み、Windowsを採用。Windows 10についても同社のPC関連製品では対応を進めていく方針をあらためて発表した。ネットワークやフィールドバスについても基本的には何にでも対応できるようにする方針だ。
さらに、同社のコアテクノロジーの1つが産業用ネットワークである「EtherCAT」についても、既に規格そのものの管理については「EtherCAT Technology Group(略称:ETG)」に移管しており、どの企業でも利用できるようになっている。同グループへの加盟は無料で、会員となれば将来の機能拡張の議論にも参加できる。
インダストリー4.0の流れは追い風
これらの「PCベース」である点、「オープン戦略」を取る点が、ドイツのインダストリー4.0の取り組みにも有利に働くという。インダストリー4.0はドイツ連邦政府が主導して進めるモノづくり革新プロジェクトで、産官学の連携により研究開発が進められている。目指しているのはマスカスタマイゼーション(カスタム製品の効率生産)を実現可能なスマートファクトリーとしているが、これを実現するためにはネットワークによる「つながる」ことが不可欠だ。
「インダストリー4.0で最も重要なのはデータだ。データを集められるようにするためには、システムを『つなぐ』ということが必要になる。この『つなぐ』ということに関して、PCベース制御は重要な役割を果たすことができる」とベッコフ氏は述べている。さらに将来像として、データの統合をクラウドで行いリアルタイムで状況監視や制御が行えるようにする未来像を示した。
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