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インダストリー4.0で日独の協力関係はあり得るのか(前編)ハノーバーメッセ2015(1/2 ページ)

ハノーバーメッセ2015において第9回となる日独経済フォーラムが開催された。毎年両国のさまざまな経済トピックがテーマとされているが今回は「インダストリー4.0」がテーマとされた。

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 ハノーバーメッセ2015(2015年4月13〜17日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において2015年4月15日、第9回 日独経済フォーラムが開催された。日独経済フォーラムでは毎年両国が関係するさまざまな経済トピックを取り上げてきたが、今回はドイツ連邦政府が主導するモノづくり革新プロジェクトである「インダストリー4.0」をテーマとした。インダストリー4.0はドイツの国家プロジェクトではあるが、製造業が経済の根幹を支える日本でも同様の課題を抱えており、日本からの関心も高まっている。

 本稿では同フォーラムの内容を2回に分けてお送りする。前編では登壇したドイツ連邦 経済・エネルギー省 政務次官のウーヴェ・べックマイヤー氏と日本 内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム プログラムディレクターの佐々木直哉氏の話をお伝えする。

デジタル化経済の新たな秩序

 インダストリー4.0プロジェクトは、ドイツ連邦政府が主導して進めるモノづくりの革新プロジェクトだ。2011年のハノーバーメッセで発表され動きが本格的なものになった。同プロジェクトで目指すのは、大量生産と同様の効率でカスタム製品を作ることができるマスカスタマイゼーションが可能なスマートファクトリーの実現だ。そのためには生産を行う機械が、人間の指示によるものではなく、自律的に作業を行えるようにならなければならない。そのカギを握るのがIoTなどICTの力で、実現する形としてサイバーフィジカルシステム(CPS)が必須のものになるといわれている(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】)。

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ドイツ連邦 経済・エネルギー省 政務次官のウーヴェ・べックマイヤー氏

 べックマイヤー氏はインダストリー4.0にドイツが取り組む背景として、経済のデジタル化やグローバル競争の過熱、ドイツ国内の高齢化による労働力不足、エネルギーコストの上昇などが課題があったと説明する。

 「デジタル化経済がメガトレンドとなる中、ドイツの国内企業も多くの課題を抱えている。調査によると95%の企業がデジタル化の影響を受けると回答しているにもかかわらず、自社が十分に備えていると回答した企業は3%に過ぎなかった。これらを解決する必要があった」とべックマイヤー氏は語っている。これらの動きは2014〜2017年にかけて実施されているデジタル化戦略などでも取り組まれている。

 ICTおよびデジタル化の力を活用し産業を強くすることを目指した一連のプログラムにより、ドイツではバリューチェーン全体の効率を高め5年間で18%の労働生産性向上を目指しているという。またインダストリー4.0を含めたスマートファクトリーやスマートホームなどさまざまな新たなビジネスチャンスを創出。関連する取り組みにより経済付加価値は2025年までに4250億ユーロを生み出すとしている。一方で「これらに対しドイツ企業は積極的な投資を行っており、5年間にドイツ企業の売上高の3.3%をこの領域に投資するという。これは現在決まっている設備投資予算の50%以上に上るものだ」とべックマイヤー氏は話している。

実現するための課題

 これらの環境において「ドイツ企業がグローバル競争の中で引き続きリーダーシップを発揮できるようにするために、技術開発面、社会面などの環境を整えていくことが必要だ。その1つがインダストリー4.0ということになる」とべックマイヤー氏は話している。

 それでは、インダストリー4.0を実現する上で課題となることはどういうことがあるだろうか。インダストリー4.0は、ICTの力により、製造現場の機器のデータを獲得しそれをネットワークを通じて集め、そのデータを基幹システムなどのデータと引き合わせることなどを含めて分析し、そしてその結果を現場までフィードバックすることで“自律的な工場”を生み出そうとしている。現在の状況と比較して、最も重要なポイントが「つながる」ということだ。べックマイヤー氏はこの「つながる」を阻害するところを課題と挙げる。

 「標準化の問題、それぞれの機器やサービスの研究開発の問題、データセキュリティの問題、法制度や規制面の問題など、さまざまな課題があるのは事実だ。チャンスは大きいが、課題も大きい。特にデータセキュリティの領域は今後非常に重要になるだろう」とべックマイヤー氏は述べている。

 これらの課題は日本でも同様だ。べックマイヤー氏は「ドイツと日本には多くの共通項がある。多くの中小企業が経済を支えている点、多くの革新を世界に起こしてきた点、国家の中心を輸出産業が担っている点など、ライバル関係になることも多いが、協力で生み出していけることも多い」と協調を呼び掛けた。

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