「つながり」が実現する超スマート社会、日立が目指す「Society 5.0」:製造業IoT(2/2 ページ)
10月7日まで開催されたCPS/IoT展「CEATEC JAPAN 2016」の基調講演で登壇した日立製作所 代表執行役 執行役社長兼CEOの東原敏昭氏は「業種を超えて超スマート社会の実現に取り組みたい」と述べた。
日立が取り組む社会イノベーション事業
このようにCPS/IoTの技術が進展する中で、日立では7年前から社会インフラとITの技術を組み合わせた社会イノベーション事業を展開している。注力しているのは「電力・エネルギー」「産業・流通・水」「アーバン」「金融・公共・ヘルスケア」の4事業分野だ。これらの事業への取り組みをOT(制御・運用)×IT(把握・分析・予測)×プロダクツシステム(ハード・材料・EPC・SI)などの技術を併せ持つ同社の特徴を生かして推進。多くのステークホルダーとイノベーションを創造するため「課題共有→見える化→ビジネスモデルのデザイン→検証とシミュレーション→具現化」という一連のフレームワークを提供している。
課題の共有については「エスノグラフィ調査」「Exアプローチ」「ビジョンデザイン」などの方法を採用した。またビジネスの検証にはサイバー上で検証を行う「Cyber Proof Concept」というツールを用いている。実装段階ではCPS/IoTのプラットフォームとして「Lumada」の提供を開始した。
Lumadaはデータの統合、分析やシミュレーションから知見を得るソフトウェア技術などで構成されるオープンで汎用性の高いプラットフォームであり、事業領域ごとのIoT関連ソリューションを迅速に開発することができる。Lumadaを活用することにより、生産性や安全性の向上、プロセスの最適化、オペレーションコストの削減などの課題の解決、さらには人々のQuality of Lifeの向上に貢献するデジタルソリューションを迅速に構築・提供することが可能だ※)。
※)関連記事:製造業に押し寄せるIoT活用の波、日立が第4次産業革命で抱える強みとは
この他、講演では検証・シミュレーションの事例として、サイバー空間上で行った地下鉄建設による都市交通渋滞の解消、人流データを活用した統合シミュレーション、最新プロダクツ投入による省エネ効果について、それぞれの検証結果を紹介した。さらに、組み立て工程の作業データと作業品質の因果関係を明確化した製造現場のスマート化実証事例や、スマートな社会の実現を目指した「柏の葉」スマートシティ、エネルギー「バーチャルパワープラント(VPP)」などの取り組みも解説した。
東原氏は「フィジカルな空間とバーチャルな空間がつながるなど、人や物も含めてさまざまなものがつながるということが重要だ。つながり続けるとそれは広がるということになる。業種を超えて超スマート社会の実現に一緒にとりくんでいきたい」と語っている。
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