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「IoTの第2フェーズはまだ始まっていない」富士通山本正己氏製造業IoT(1/2 ページ)

10月7日まで開催されたCPS/IoT展「CEATEC JAPAN 2016」の基調講演で登壇した富士通 代表取締役会長の山本正己氏は「IoT活用の第2段階はまだ始まっていない」と述べている。

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 2016年10月4〜7日に千葉県千葉市の幕張メッセで開催されたCPS(サイバーフィジカルシステム)/IoT(モノのインターネット)展「CEATEC JAPAN 2016」の基調講演に富士通 代表取締役会長の山本正己氏が登壇。「IoTがもたらす豊かな未来に向けて」と題して、富士通のIoT事業に関する取り組みを紹介した。

IoT活用で実現する3つの未来

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富士通 代表取締役会長の山本正己氏

 山本氏によるとIoTは実際にビジネスや暮らしの中に浸透し、変化をもたらしはじめているという。

 「特に交通マネジメント、農業、産業、医療の各分野では顕著に見られる。中でも導入が進んでいるのが交通マネジメントの分野だ。例えば、インドネシアなどでは一般道路の交通渋滞を緩和するためにIoT技術を導入し、車両の誘導などに利用している。センサーとしてはスマートフォンを用いており、この方法は比較的低いコストで導入できるというIoTのメリットの一つを生かしている。また、農業分野でも植物工場が実現し、温度、湿度、CO2濃度などをセンシングして、育成に理想的な環境を自動的に保つ。これにより望んだ品質で安定的な生産が行われている」(山本氏)

 だが、IoTの活用は始まったばかりである。そのため「IoTにはまだまだ大きなポテンシャルがあると考えている」と将来性に期待をかける。実現された未来の姿をイメージしてもらうため富士通では2035年のIoTがもたらす変革として、3つのシーンを掲げている。

 1つ目は「世界各地の人々が理解しあい、課題をみんなで解決する」という社会問題シミュレーションだ。人々がバーチャル空間上で社会問題の解決策を討論。AIがファシリテータとして専門家や関連データをガイドし解決へ導くというもの。自動翻訳機能も文化や習慣の違いを考慮した自然な翻訳が可能で、参加者は母国語で話すことができるという点が大きな特徴だ。

 2つ目は「より長く健康で暮らすためのサポートの充実(一生イキイキと生きる)」。体内のナノロボットと連動してAIが個人の健康管理についてアドバイスする。バイタルデータはセキュアに統合され医療機関、創薬企業で活用される。

 3つ目は「誰もが多彩な人生を楽しむ」。AI、ロボットの活用で増えた余暇をつかってのキャリア学習や社会活動への参加をAIコンシェルジュがサポートする。

 これらは、実現可能な世界であるが、一方で「それに向けて技術、社会、経済の3つの側面から乗り越えなくてはいけない壁が数多くある」ことも山本氏は指摘する。

IoTで越えなければならない壁とは?

 山本氏はIoTで技術的に越えなければならない壁として、センサー技術を挙げる。具体的にはセンシングの精度に課題があると指摘する。「今後さらなる高度な活用を進めるためには、より高精度なセンシング技術が必要だ。また、センサーには電力供給の課題もある。それを解決するため富士通が既に導入しているマンホールに取り付けた水位センサー向けに環境発電(エネルギーハーベスティング)などを採用している」と山本氏は述べている。

 さらに高度な要求がよせられるネットワーク技術も課題であるといえる。これらに対しては「高スループット、大容量、高信頼・低遅延、多種多様接続などの技術で対応する。さらに、ネットワークではクラウドコンピューティングが現在主流だが、今後、トラフィックが増大していく中では、ユーザーにより近いよりところで処理をし、ネットワークとコンピューティングが完全に融合したかたちのエッジ(フォグ)コンピューティングが主力になる。こうした技術トレンドにも対応していく」(山本氏)としている。

 また、通信と並んで重要になるのが集めたデータを生かすという技術だ。そのためにもAI(人工知能)の発展が不可欠となっている。現在ディープラーニングがもたらした第3次AIブームを迎えており、それは画像認識の分野の進展に貢献した。一方、AIには課題もあり、ブラックボックス化の回避、並列処理の実現、フレーム問題の解決などがあげられている。その他、ブロックチェーンの重要性なども示した。

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