3Dスキャナーに風が吹く、インダストリー4.0と製品検査自動化の動き:計測・検査(3/3 ページ)
米国AMETEKグループのCreaformは携帯型3Dスキャナーで市場に独自のポジションを形成。従来の製品開発用途だけでなく、品質検査領域などへの対象領域を拡大し、日本市場においても今後5年間で2倍の売上高を目指すという。
3Dスキャナー普及の4つのトレンド
MONOist 3Dスキャナーの導入や利用環境が拡大する背景として、製造業のどのような変化があると考えますか。
ラモンターニュ氏 現在から将来にかけてのトレンドとして主に4つの要素があると考えている。1つ目が高齢化である。熟練技術者の高齢化が進む中で、これまでの人に頼った製品開発の手法を、効率化しデータなどの蓄積による技術伝承などを進めていく必要がある。こうした解決手法の1つとして、3Dスキャナーが使われるという流れである。
2つ目が、3Dデータの活用の幅が広がってきているという点だ。2010年代は「3Dの10年」ともいわれる。若い世代が3Dデータの活用に親しむ中、このデータを基盤にしたプロセスの効率化や、新たなビジネスモデルの創出などが進む。リアルの製品やパーツを3Dデータ化しコンテンツとできる3Dスキャナーの役割はさらに広がると考える。
3つ目が、エンドユーザーがさらなる高品質を求める動きである。より高品質で繊細な形状や表面品質などを実現するためには、より高精度で高信頼性を実現しつつ使いやすい検査機器が必要になる。こうした役割を3Dスキャナーが担うというものだ。
そして4つ目が、インダストリー4.0などスマートファクトリーの動きである。インダストリー4.0などが目指している「自律した生産システム」実現のためには、それぞれの機械が自動で行う動作やその作業によって生み出されるパーツが、正しい結果を生み出しているか、ということを検査しなければならない。その検査用途として利用が拡大すると見られている点である。
MONOist 実際にインダストリー4.0やスマートファクトリーなどに関連して、3Dスキャナーが導入される動きなどもあるのですか。
ラモンターニュ氏 実際にはまだそうした動きはごくわずかで、始まったばかりといえるだろう。現実的にはまだマニュアルで検査している生産ラインなども多い。しかし、生産ラインの自動化領域を拡大し、最終的な自律化を求める動きが進むのであれば、工程内での自動検査は必須となる。現状でも自動検査へのニーズは高まってきており、今後は成長が期待できる。
日本市場は5年で売上高2倍に
MONOist 日本市場への期待を教えてください。
ラモンターニュ氏 現在、日本市場での3Dスキャナーの導入台数は500〜1000台程度だと見ているが、日本市場はまだまだ成長の余地があると考えている。2017年1月には千葉県成田市に、修理・校正用の施設を設置する予定。これらの投資を進めることで、5年間で2倍以上の売上高を目指したい。
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