インダストリー4.0では、サプライチェーンを“丸ごと認証”する時代へ進む:製造業×IoT キーマンインタビュー(3/3 ページ)
インダストリー4.0を含むIoTによる製造業のビジネス革新の動きが加速している。IoTによる価値を最大化するためには「つながり」を実現することが最初のステップとなるが、その動きで重要となるのが標準化と認証である。創立150周年を迎える第三者認証機関であるTUV SUD(テュフズード)の会長であるシュテプケン氏と、同社CDOのシュルシンガー氏に、IoTによる製造業の変化とそれに伴う「認証」の考え方について話を聞いた。
インダストリー4.0とIICの関係性
MONOist RAMI4.0を1つのリファレンスアーキテクチャモデルとして参考にすると話をしていましたが、米国の大手企業を中心に設立されたIIC(インダストリアルインターネットコンソーシアム)なども独自のアーキテクチャモデルを示しています※)。このあたりはどう考えますか。
※)関連記事:「ソニーも最初は町工場だった」IoT革新は中小製造業が起こす
シュテプケン氏 ドイツや米国、日本や中国など、それぞれがさまざまな活動を行っている状況だが、最も重要な点はグローバルスタンダードを構築していくということだ。グローバルで共通の基盤を築いていかなければ、相互運用性の確保が難しくなる。そうすると、自動的にIoTの発展の停滞につながる。まずは共通の基盤を築いていくためにどうするべきかという考え方が重要である。
われわれはインダストリー4.0の標準化を進めるグループに参加している一方で、IICにも参加している。国ごとや企業ごとで単独の規格を推し進めるのでなく、それぞれが共通の基盤を作り出していかなければならない。
これまでは強い国が地域でのスタンダードを設定してきたが、既にそういう時代は終わりを迎えつつある。グローバル化がここまで進む中で競争力や効率を考えた場合、それぞれの国や企業が協力していく必要がある。
シュルシンガー氏 共通基盤の構築を目指すのは前提として、それぞれを見ると、RAMI4.0とIICのリファレンスアーキテクチャでは、指し示す範囲が異なっており、相互補完的な形でカバーできるだろうと考えている。
ただ、個人的な見解だが、どちらのリファレンスアーキテクチャモデルもまだコンセプトレベルの話で、実装レベルの話になるにはまだ時間がかかる。最終的には、中堅・中小企業が簡単に実装して使えるようにならなければ、IoTの価値を最大化することはできない。その意味ではこうした動きは、トップダウンで行うべきものではなく、ボトムに対してどういうメリットを生み出していくかが、全体を押し上げる重要なポイントになる。
中小・中堅企業が標準化を進める難しさ
MONOist 中堅・中小企業が標準化や、標準の積極的な採用を行うのは難しいように感じるのですが、その点についてはどう考えますか。
シュテプケン氏 中堅・中小企業だけにとって難しい話だとは私は思わない。ドイツの中堅・中小企業のオーナーと話をしてもセキュリティなどには関心がある。サプライチェーンの一部を中堅・中小企業が担う中で、企業の大小は関係なく、セキュリティは必要な技術になっている。「知財をどう守るのか」や「サイバー犯罪による被害を受けないか」などの懸念は多くの企業が抱えており、こうした影響がモノづくりへの情熱をそぐ結果となっている。
このような状況に対応するために、われわれは中堅・中小企業向けに、「サイバーセキュリティクイックチェック」というサービスを開発した。中堅・中小企業が簡単にセキュリティチェックを行い、それを基盤に対策を作ることができるというものだ。こうしたツールなども増えてきており、中堅・中小企業のこうした新しい技術への取り組みもハードルは下がってきているのではないか。
新しい技術は新たな市場獲得のチャンス
MONOist 日本の中堅・中小製造業では、新しい技術の採用に消極的な企業も少なくありません。どういう考え方が求められると思いますか。
シュテプケン氏 新しい技術の採用には確かに投資が必要でリスクはあるが、新しい市場に打って出る大きなチャンスだと捉えてほしいと思う。従来は新しい市場に打って出るにもコスト面などで難しかったところもあったが、現在のICTやIoTの動きによりそのハードルは下がっている。
製造業におけるサプライチェーンやバリューチェーンの中に今は中堅・中小製造業は組み込まれているが、新技術を積極的に採用することで新しい市場を獲得できる。逆にそうしなければ、大企業が自社でその手段を賄うようになり、とってかわられる危険性もある。中堅・中小企業には新しい技術に、よりオープンな姿勢が求められるようになる。当然リスクもあるが、そのリスクを低減するためにわれわれのような認証機関の存在があるのだ。
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