ispaceの目指す、群ロボットが月面探査に向かう未来:ロボットキーマンを訪ねて(5/7 ページ)
民間月面レース参加の次は、1000台の群ロボットで月面資源探査。ispaceの描く構想は壮大であり、実現するための知見も多く蓄えられている。「群ロボットで宇宙資源探査」の意図を尋ねた。
群ロボットは100台を1度に持っていくわけではないという。まず第1陣が行って、その成果を見て第2陣の構成を少し変えよう、ここは改良しようとか、段階的に進めていくという構想だ。超小型衛星のベンチャーでは、そうした動きが加速しているという。
袴田氏 超小型衛星を手掛けるベンチャーに似た手法をとるところがあります。彼らは4kgぐらいの超小型衛星を200基打ち上げる計画を持っており、既に70基近くが飛んでいます。1基あたりの寿命はあまり長くありませんが、その代わり、どんどん新しいテクノロジーにアップデートしていくという戦略です。
ソフトウェアの観点からも、まず試してみて、バグがあれば修正して、よりよいものができたら他に完璧になったものを反映させていくというやり方が取られています。宇宙開発において群ロボットという構想がさらに広まってくれば、そういったやり方でどんどん知識が集積されていくと思います。
宇宙の「民主化」
相乗り衛星の登場でこれまでのロケット打ち上げとは比較にならないコストで超小型衛星を打ち上げることが可能となり、それが大きなブレイクスルーとなったことは確かだ。超小型衛星を開発する技術を持つ企業、大学、団体が増えてきたことも事実だ。
とはいえ、それ以上にもっと私たちの生活の中に、身近になっていくにはもっと何かが必要なのではないかと思う。デジタルファブリケーション、ロボット、機械学習、人工知能……と、さまざまな技術が日常の中に入ってこようとしているが、宇宙はどうだろうか。いわゆる「民主化」が起こり得るのだろうか。
袴田氏 個人的にはそういう方向に持っていきたいと思っています。根本にある考え方というのは、宇宙が本当に「産業」になっていくこと。より多くの人に価値が提供できないと産業にはならないはずなので、それが宇宙の技術、宇宙開発がどんどん民主化していくということになると思います。
今の段階は、これまで国でしかやれなかったものが、ベンチャー企業であったり、大学ができるようになってきたという段階。もちろん、以前から頑張ればできたのでしょうが、そういう手段も機会も少なかったのだと思います。いま大学やベンチャー企業がトライしながらいろいろな可能性が見えてきて、またそこで経験を積んだ人たちが、また一段民主化したチャレンジをしてくると思うのです。
例えば「ARTSAT」がいまクラウドファンディングでキット化しようとしていますね。そうやって、どんどん「民主化」の例が出てくると思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 宇宙での資源探査を1000台の群ロボットで
民間宇宙探査チーム「HAKUTO」を運営するispaceがジグソーと共同で、宇宙での資源探査を行う小型ロボット群の開発を開始した。 - KDDIが民間月面探査に協力、「HAKUTO」とパートナー契約
民間企業による月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に挑戦中の日本チーム「HAKUTO」にKDDIが協力。月面探査を通信面からサポートする。 - Google月面探査レース参加の日本チーム「HAKUTO」、2016年後半に月面探査機を月へ
国際宇宙開発レース「Google Lunar XPRIZE」に参加している日本の民間宇宙探査チーム「HAKUTO」が月面探査機(ローバー)の打ち上げ計画を発表した。 - 「協力しないかと言われたら『Why not?』ですよ」〜月面レースに挑む研究者、東北大・吉田教授(後編)
東北大学・吉田和哉教授へのインタビュー【後編】。前回の「超小型衛星」に続き、今回は民間初となる月面無人探査コンテスト「Google Lunar X PRIZE」への挑戦、そして「月面ローバー」の開発について紹介する。 - 「超小型衛星を日本のお家芸に」〜月面レースに挑む研究者、東北大・吉田教授(前編)
「超小型衛星」の分野で活躍中の東北大学・吉田和哉教授に、宇宙ロボットの最新状況を聞いた。