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ispaceの目指す、群ロボットが月面探査に向かう未来ロボットキーマンを訪ねて(3/7 ページ)

民間月面レース参加の次は、1000台の群ロボットで月面資源探査。ispaceの描く構想は壮大であり、実現するための知見も多く蓄えられている。「群ロボットで宇宙資源探査」の意図を尋ねた。

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技術的な課題は移動・コミュニケーション・センシング

吉田和哉氏
ispace CTO 吉田和哉氏(東北大学 工学研究科 航空宇宙工学専攻 教授)

 月面に群ロボットのシステムを送り、動作させる。そのための技術的な課題は大きく3つある。

  • (1) アウトドア環境(自然不整地)での探査を可能にする群ロボットの「移動機構(mobility design)」
  • (2) アウトドア環境でのロボット間の「情報・データ通信技術」(遠距離・障害物・非見通し環境)
  • (3) 資源を見いだすための「センサー技術」

 探査機としては、1個1個が数kg、10cmから2〜30cm立方に入るようなイメージ。となると、そこまで小さくしたときに、果たしてどれくらいの移動ができるのか。

 また、複数台が互いに自律機能を持って移動することになるが、最終的には互いに連絡を取り合わないと意味がない。自然環境の中で、障害物があったり、さまざまな地形があったりする月で(月に水平トンネルがある可能性が明らかにされている)通信を確保する必要もある。

 そして、月面上で資源を探すためにどういうセンサーが必要なのか。技術がどこまで来ていて、いま何が足りないのかというのもまだ完全には解決されていない。

吉田氏 これは、移動・コミュニケーション・センシングが相まって初めてできる話です。それをどれくらいのコンパクトボディーに集約できるのか。そうしたとき、1つのものがどれくらいの速さで移動でき、どれくらいのエリアをカバーできるモビリティが持てるのか、それが全体のシステム設計に全てリンクしてきます。

 まずは、ミニマムのタスクをこなすためにどのくらいのサイズでどういう機能を持たせればいいかをきちんと地固めしている段階だという。

 また、袴田氏は「例えば100台だとすると、100台が全部同じロボットである必要はないと思います。その中でも幾つかのタイプがあっていい。少し大型でセンターになるようなロボットと、手足的に動く小さなロボットであってもいい」という。

袴田氏 階層構造に限らず、いろいろなアーキテクチャを試しながら作っていく予定です。2017年年頭のデモ機完成を目標にしていますが、それも幾つか検討する中のコンセプトの1つ。完全なソリューションではないと思います。デモとしては、幾つか試した中で実用に近いものというのを提示していくことを考えています。

 袴田吉田氏の述べる「階層構造」とは、昆虫にもみられる群ロボットの構成形態だ。ロボットの研究では生物の動きを模して行われることがある。群ロボットの研究ではその中でもアリやハチの群行動に注目し、女王アリ<バチ>を中心に多数の働きアリ<ハチ>がツリー状(階層構造状)にコミュニケーションや行動について協働する仕組みが研究されている。

 あるいは、蚊や渡り鳥。密集して群れを作るが、誰かが指令を出して群れを作っているわけではなく、1つ1つの単体はすごく単純なアルゴリズム(恐らく仲間を見つけたら近づくが、ある程度以上は近づきずぎない)で、システムとして群れを成す機能がある。そういう研究も30年以上前から知られている。これは自律分散という研究分野で、冒頭で紹介した「みつめむれつくり」はその最初のデモといわれている。分散系によって、それぞれは単純なアルゴリズムで自律しているが、その結果が全体として何か意味を持つというもの。また、群れ全体で何か知能的な行動ができないかという群知能の研究もある。

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