ispaceの目指す、群ロボットが月面探査に向かう未来:ロボットキーマンを訪ねて(2/7 ページ)
民間月面レース参加の次は、1000台の群ロボットで月面資源探査。ispaceの描く構想は壮大であり、実現するための知見も多く蓄えられている。「群ロボットで宇宙資源探査」の意図を尋ねた。
「面で効率性を出す」というコンセプトに近いものとして、人工衛星軌道の研究でも「コンステレーション」というアプローチがある。これは、単体ではなく、複数の人工衛星を協調動作させることで広いエリアをカバーするという考え方だ。
「私たちのものは、軌道を規則正しく動くというよりは、自由に表面を動くという意味でさらにチャレンジですが、そういう(複数台で目的を達成する)考え方が、まるきり宇宙で使われていないというわけではないですね」と袴田氏は群ロボットによる宇宙探査はとっぴなアイデアはないと語る。
袴田氏 NASAの火星探査ロボット(探査機)は、1997年のソジャーナは電子レンジほどの大きさでしたが、その次の2003年、2004年に火星に到着したスピリットとオポチュニティはゴルフカートくらいになり、現在活動しているキュリオシティは高級外車なみといわれる大きさです。いろいろな機能を持たせて大型化しており、それは1つのトレンドなのですが、失敗すると、何千億円が一瞬にして消えてしまいます。
それに対して、機能は限られながら1回のコストは安いというものを数多く分散させれば、そのうち5%や10%が故障しても、残りの90%が動いていれば目的を達成できるという発想は以前からあります。
リスク分散にもなりますし、日本が得意とする小型化にもかみ合う。アイデアはありながら、実際に手を動かしている人は少ない。そういう現状かなと思います。
小型化という観点では実際、キューブサットに代表される超小型衛星が既に実用化されている。こうした超小型衛星を“相乗り”で打ち上げることで、大学や研究機関、民間の組織の参加が可能になり、多様な目的で衛星が打ち上げられるようになっている。新規参入のハードルを下げ、多様性を広げることにつながっている。宇宙資源探査もその方向であるべき、ということなのだ。
袴田氏 考え方として、NASAみたいに高級車を打ち上げるということが必要なフェーズはもちろん出てくると思います。ただ、私たちとしては、いまの段階では高級車を1台ではなく、ミニカーを100台上げたほうが、私たちの目的にはかなっているという考え方です。
関連記事
- 宇宙での資源探査を1000台の群ロボットで
民間宇宙探査チーム「HAKUTO」を運営するispaceがジグソーと共同で、宇宙での資源探査を行う小型ロボット群の開発を開始した。 - KDDIが民間月面探査に協力、「HAKUTO」とパートナー契約
民間企業による月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に挑戦中の日本チーム「HAKUTO」にKDDIが協力。月面探査を通信面からサポートする。 - Google月面探査レース参加の日本チーム「HAKUTO」、2016年後半に月面探査機を月へ
国際宇宙開発レース「Google Lunar XPRIZE」に参加している日本の民間宇宙探査チーム「HAKUTO」が月面探査機(ローバー)の打ち上げ計画を発表した。 - 「協力しないかと言われたら『Why not?』ですよ」〜月面レースに挑む研究者、東北大・吉田教授(後編)
東北大学・吉田和哉教授へのインタビュー【後編】。前回の「超小型衛星」に続き、今回は民間初となる月面無人探査コンテスト「Google Lunar X PRIZE」への挑戦、そして「月面ローバー」の開発について紹介する。 - 「超小型衛星を日本のお家芸に」〜月面レースに挑む研究者、東北大・吉田教授(前編)
「超小型衛星」の分野で活躍中の東北大学・吉田和哉教授に、宇宙ロボットの最新状況を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.