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「IoTの困難さ」に直面するインダストリー4.0IoT観測所(21)(3/3 ページ)

第4次産業革命として注目される「インダストリー4.0」は、既に実践段階に入っている。技術的にはOPC UAベースでの実装が推奨されているが、意図する“しなやかさ”を実現するための技術的な困難は残されている。

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 先ほどのPhoto02でCommunication Layerに当たる部分は、Information Layerに向けて統一したデータフォーマットによる統一された通信機能を提供すると共に、Integration Layerの制御用のサービスを提供するもの、と定められているが、実装としてはここにOPC UAを利用する、というか、手っ取り早くOPC UAベースでCommunication Layerの構築をしてしまうことを定めてしまった形だ。

 そんなわけでIndustrie 4.0はOPC UAをベースにしている事そのものは間違いではないのだが、だからといってOPC UA「だけ」で実現しないのが難しい。こちら(インダストリー4.0で重要な役目を果たす、Windows生まれの「OPC UA」)にも書いたが、OPC UAはOSIの参照モデルで言うところのトランスポート層からプレゼンテーション層のみに相当しており、その上位/下位層が無い。上位層に関してはIndustrie 4.0のInformation Layerが担う事になっているのでここでは考えなくても良いが、問題は下位層である。

 RAMI 4.0の序論で、Communication/Information/Functionalの各Layerに関しては、手法が明示されているから悩む必要はないのだが、IntegrationやAssetに関しては、こうしたものがない。既存の規格でそのまま利用できるものは利用しよう、という方向性は示されており、実際、Industrie 4.0に関係あるオープンな規格の中に、通信関連ではOPC UAの他にも、「IEC 62439」「IEC 61158」「IEC 61784」「IEC 62591」と4つの通信規格が並んでいる。

  • IEC 62439(Industrial communication networks – High availability automation networks)
  • IEC 61158(Industrial communication networks – Fieldbus)
  • IEC 61784(Industrial communication networks – Industrial Ethernet)
  • IEC 62591(Industrial communication networks – WirelessHART)」

 実はこの4つがどれもクセモノ。IEC 61784を例にすると、これは「産業用イーサネット」と呼べるが、実際にはIEC 61784-1(Fieldbus)とIEC 61784-2(Realtime Ethernet)の2種類がある。さらに言えば、恐らくIndustrie 4.0はここまでは考えてはいないと思うのだが、2016年4月にIEC 61784-3(Functional safety Fieldbus)の規格も公開されている。

 取りあえずこれは置いておくとして、IEC 61784-1、61784-2のいずれもCPF 1〜CPF 16までの規格(CPF:Communication Profile Family)が用意されており、IEC 61784-1が9種類、IEC 61784-2が11種類存在する(IEC 61784-2ならばEtherNet/IP time sync、Profinet、P-NET on IP、Profinet GW、V-net/IP、TC-net、EtherCAT、ETHERNET Powerlink、EPA、MODBUS-RTPS、SERCOS IIIといった具合だ)。

 どれも物理層はEthernetで、その上でフィールドバスとして利用するために必要なプロトコル拡張などを施したもので、基本的に相互の互換性は無い。もちろんOPC UAにも、複数の物理層の通信規格をルーティングするなんて機能は持ち合わせていないから、お互いの通信が困難というのは非常に理解しやすい。

 ある意味「IoT」として扱われるモノについても規格が乱立しており、規格をまたいだ通信の事があまり考えられていない、というのはこの連載で示してきた形だが、Industrial 4.0もまさしく同じ状況に陥っており、このあたりの解決に手間取っている、というのが現状である。

 ただ、RAMI4.0はこれで完成ではなく、あくまでも第一ステップであるという位置付けであり、今後も継続的にバージョンアップされてゆく予定。「第一ステップとしてはこれでよし」としている感じは受ける。

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