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なぜドイツはインダストリー4.0を生み出す必要があったの?いまさら聞けない第4次産業革命(3)(1/4 ページ)

製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。しかし、そこで語られることは抽象的で、いまいちピンと来ません。本連載では、そうした疑問を解消するため、第4次産業革命で起こることや、必要となることについて分かりやすくお伝えするつもりです。第3回ではなぜドイツがインダストリー4.0を生み出す必要があったのかということを紹介します。

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本連載の趣旨

 「第4次産業革命」や「インダストリー4.0」などの言葉を聞かない日はないほど、大きな注目を集めています。4番目の産業革命とされている通り、製造業の業態についても大きな影響を与える「第4次産業革命」ですが、その認識レベルや捉え方は置かれている立場や状況で大きく異なります。また「第4次産業革命とは結局何?」という人から「抽象論は分かったから具体的な技術の話が聞きたい」など求める情報レベルも大きく幅があるように感じています。

 そこで本連載は、「いまさら聞けない第4次産業革命」とし、第4次産業革命で製造業が受ける影響や、捉える方向性などについて、分かりやすくご紹介していきたいと考えています。ただ、単純に解説していくだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介していくつもりです。

※)本連載では「第4次産業革命」と「インダストリー4.0」を、意味として使い分けて表記するつもりです。ドイツ連邦政府が進めるインダストリー4.0はもともと第4次産業革命という意味があります。ただ、本稿では「第4次産業革命」は一般用語として「IoTによる製造業の革新」を意味する言葉として使います。一方で「インダストリー4.0」はドイツでの取り組みを指すものとします。


本連載の登場人物

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矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)

自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、話が始まる。


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印出 鳥代(いんだす とりよ)

ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。第4次産業革命についてのさまざまな疑問に答えてくれる。


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。

前回のあらすじ

第2回:「インダストリー4.0って何でこんなに注目されているの?

あらすじ概略

 従業員200人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「新聞で読んだけど、君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われます。しかし、「第4次産業革命」といわれても「それが何なのか」や「どう自分たちの業務に関係するのか」がさっぱり分かりません。そこで、矢面氏は第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺うことにしました。


 さて前回は、「第4次産業革命」が注目を集めるきっかけとなったドイツの「インダストリー4.0」について、ドイツ出身の印出鳥代氏が気持ちを込めて説明していましたね。

 その内容を少し振り返ってみましょう。第4次産業革命の中核を担うIoT(Internet of Things、モノのインターネット)という技術や、その活用は実はそれほど新しいものではありません。しかし、特に製造業において第4次産業革命への取り組みが進んだきっかけとして、ドイツ連邦政府が強い決意で進めている「インダストリー4.0」があるのでしたね。そして、その大きな要因として、2つの点があると紹介しました。

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1つは、IoTを活用した製造業の理想像を明確な姿で発信したということね。マスカスタマイゼーションを実現する自律的な製造現場を作り上げるということが多くの人にイメージできたんじゃないかしら。


 もともとリードタイムや在庫の究極的の削減や「1個流し」などは多くの製造業が共通して持つ理想形です。しかしドイツ連邦政府がICT(情報通信技術)を活用してこれらを実現した姿を「未来の製造業の理想像」と明確に示したことに、多くの製造業が刺激を受けたといえるのでしょう。

 そして2つ目の理由が、競争で負けるという危機感からでしたね。

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ドイツが新しいモノづくりの形を完成させたとして、ドイツ企業からある日とんでもない製造要件が提示されるということがあり得るということですもんね。


 第1回で「IoTはまだ正解例がなく試行錯誤をより早くより多く進めるべき」との話をしましたが、ドイツ連邦政府がこの「新しいモノづくりの理想形」を固い決意で実現しようとしていることを考えれば、こうした世界はいつかは実現するのではないかと思います。

 日本の製造業が今のままのやり方で変わらず、ドイツが先進技術を使って有利な形で新たなモノづくりの姿を実現した場合、彼らの論理が日本の製造業にも押しつけられる可能性が生まれます。こうした状況を考えると、日本企業としても不利にならないように最低限の情報の把握と、発信先を持つ必要があります。そこで、さまざまな団体活動や連携などが生まれ、盛り上がりを見せているのでしたね。

 さて、前回に引き続き今回も、このドイツのインダストリー4.0について触れたいと考えています。前回は「第4次産業革命のきっかけとなったインダストリー4.0」という切り口で紹介しましたが、今回は国家・政府として「なぜドイツがインダストリー4.0を生みださなければならなかったのか」という点について紹介します。合わせてドイツの状況から日本の状況についても触れたいと思います。

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