インダストリー4.0で重要な役目を果たす、Windows生まれの「OPC UA」:IoT観測所(20)(3/3 ページ)
Windows OSで使われていたOLEを発端とする産業オートメーション標準規格が「OPC UA」だ。トランスポート〜プレゼンテーション層に相当する機能を提供しながら上下層の規定がないという柔軟性を持ち、インダストリー4.0においても重要な役割を担う。
最下層にあたるのがOPC UA BASEと呼ばれる部分である。ここは従来COM/DCOMで実装されていたメッセージ交換部分であるが、OPC UA BASEではこれをSOA(Service-Oriented Architecture)で実装している。SOAはさまざまなプラットフォームで利用されているから、これでマルチプラットフォーム性が担保できることになる。
その上に「DA」「A&E」「HDA」「CMDs」という4つのInformation Serviceと、それとは別にInformation Model Specification(Photo02では「標準インフォメーションモデル」とされている)という層が載っている。このうちDA/A&E/HDAの3つはOPC Classicと同じもので、CMDsというのは2004年に追加されたOPC Commandsという仕様である。
もともとOPC Classicの3つの機能は稼働中のシステムの状態やデータを取得するためのものだが、もっと根本的にシステムの起動/停止といった動作制御も行いたいという要望があり、このために追加されたのがOPC Comamnds(CMDs)である。OPC Classicではこれが追加仕様という扱いだったのが、OPC UAでは標準仕様として取り込まれた形だ。
その上位にある「標準インフォメーションモデル」とは何か?というと、OPCのもっと上位にあるアプリケーションプロトコルである。Photo02ではIEC(IEC 62541)、ISA(ISA-95)、MIMOSAといった標準規格が挙げられているが、他にもFDI(Field Device Integration)、ADI(OPC Analyzer Device Integration)、FDT、ODVA、PLCopenなど、さまざまなものが想定されている。これらはOPC UA Companionと呼ばれているが、こうした標準規格の下位層として利用できるのがOPC UAの特徴でもある。
もちろん、これらの中にはOPCが定めたものもある。例えばIEC 62541はOPC UAをIEC標準化したものそのままである。ただそれ以外の標準規格とも扱いは同じになっており、実際多くの規格が利用されている。またISA-95とPLCopenに関しては、OPC Foundation内にWorking Groupが設けられており、ここでそれぞれの規格をOPC UA上で利用するための仕様の策定活動などが行われている形だ。
Photo02に話を戻すと、標準インフォメーションモデルの上位に、さらにベンダー固有インフォメーションモデルが用意されているが、これは名前の通りそれぞれの機器ベンダーが独自拡張する事を許しており、これをサポートする形だ。このベンダー固有インフォメーションモデルの上位にアプリケーションがあるが、このアプリケーションはどのサービスにもアクセスできる様になっている。
そんなわけで、OPC UAは言ってみればOSIの参照モデルで言うところのトランスポート層〜プレゼンテーション層に相当する機能を提供するだけで、その上位層や下位層に関しては特に規定がないという柔軟性を持つ。その一方で、製造・生産現場のシステムに要求される通信方式に関して幅広い機能を提供できる。ということでOPC-UAはIndustry 4.0における推奨通信規格として採用されるに至っている。次回はこのあたりの話をご紹介したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 産業用ネットワーク「PROFINET」はIIoTを実現するのか
今回はFAとPAの双方をカバーするフィールドバスとして重用されている、イーサネットベースの産業用ネットワーク「PROFINET」を取り上げる。オープン規格であるため、IIoT(Industrial IoT)を実現する規格であるともいえるが、そう単純なものではない。 - 「Lite」で普及の兆しを見せる「ECHONET」、波乱万丈の20年史と今後の課題
国内HEMSの標準プロトコルとなり電力自由化の後押しもあって、普及の兆しが見える「ECHONET Lite」だが、前身のECHONETを含めると苦難の連続といえる。その歴史を振り返り、現状の課題を確認する。 - 日本発の無線規格「Wi-SUN」、国際展開への飛躍を阻む4つの問題
IoTにまつわる標準化規格で数少ない日本発の規格が「Wi-SUN」だ。家庭向けに低消費電力でメッシュネットワークを構築できるWi-SUNの特徴と、国際的なデファクトスタンダード化を阻む問題について解説する。 - IoT団体によるUPnP(Universal Plug and Play)吸収を読み解く
インテルやサムスンらが主導するIoT標準化団体「OIC」が、UPnP(Universal Plug and Play)Forumを吸収した。UPnPの推進する“挿すだけで使える”をIoTに持ち込むことは理にかなっているように思えるが、AppleのHomeKitや、GoogleのProject Brilloに対する競争力はあるだろうか。 - 出遅れた老舗「oneM2M」、Alljoyn連携で巻き返しなるか
通信関係の標準化団体が組織した「oneM2M」は、M2Mプラットフォームの水平化を狙うが、IoTを取り巻くスピードは速く、実装までを考えると遅きに失する感が否めない。Alljoynとの連携での巻き返しを狙う。 - アマゾン「AWS IoT」は何が衝撃的なのか
米Amazonが発表したIoTサービス「AWS IoT」は業界に大きなインパクトを与えた。一企業の発表した取り組みがなぜ、IoTを取り巻く各社に大きな影響を及ぼすのかを考察する。