工場用のイーサネットって何だろう?:工場用イーサネット入門(2)(4/4 ページ)
インダストリー4.0や工場向けIoTなどに注目が集まっていますが、そもそも工場内のネットワーク環境は、どのように構築すべきなのでしょうか。本連載では、産業用イーサネットの導入に当たり、その基礎から設備設計の留意点などを含めて解説していきます。第2回ではイーサネットとは何かを紹介します。
Ethernetの歴史とOSI参照モデル
さて、ここまで産業用Ethernetと一般的なEthernetとの違いについて紹介してきました。ここであらためてEthernetの歴史と、非常に基本的なOSI参照モデルという考え方を整理しておきます。
Ethernetの原点は、ハワイ諸島の島々を4800bpsの無線ネットワークで結ぶALOHAシステムだといわれています。そのALOHAシステムに基づいて、1973年にゼロックスの研究員であるロバート・メトカーフ氏を中心にEthernetの原型が開発されました。ちなみに、「イーサ、ether」は、古典物理の時代に光の媒質として宇宙の隅々まで満たしているのではないかと考えられた仮想の物質「エーテル(Ether、Aether)」から付けられました。
その後1970年代中頃から、コンピュータ同士をネットワーク接続するために、さまざまなメーカーによってネットワーク技術が開発され、それらを使ったネットワーク機器が販売されるようになりました。しかし、これらの技術は各社が独自の仕様を作って販売しており、異なるメーカー間ではネットワーク接続が出来ない、などといった問題も起こるようになりました。そこで、国際標準化機構(ISO)によって「開放型システム間相互接続(OSI:Open System Interconnect)」が作成され、OSIの設計方針に基づいて通信機能を分割して階層化したものが「OSI参照モデル」です。これは、7つの階層から構成されるため、「7階層モデル」と呼ばれることもあります。
- 第7層 アプリケーション層:HTTPやFTPなどの具体的な通信サービス
- 第6層 プレゼンテーション層:データの表現方法
- 第5層 セッション層:通信プログラム間の通信の開始から終了までの手順
- 第4層 トランスポート層:ネットワークの通信管理(エラー訂正、再送制御など)
- 第3層 ネットワーク層:ネットワークにおける通信経路の選択(ルーティング)
- 第2層 データリンク層:直接的(隣接的)に接続されている通信機器間の信号の受け渡し
- 第1層 物理層:物理的な接続。コネクタのピンの数、コネクタ形状の規定など
図のように、OSI参照モデルでは、コンピュータシステム上のアプリケーション間のデータは、OSI参照モデルの階層を第7層から第1層まで通って相手に渡され、届いたデータは、今度は第1層から第7層を通ってデータ通信は完了します。
まとめ
ここまで見てきたように「Ethernet」は、適用領域によって独自の進化を遂げてきました。以前は、それぞれのモノづくりに最適化された産業用Ethernetを利用し、他の制御設備との相互接続などは考慮する必要がありませんでした。しかし、センサーを利用したシステム障害の予兆検知やマスカスタマイゼーションなどを実現しようとすると、これらの異なる産業用Ethernetを一つのネットワークで統合管理する必要が出てきています。
第3回以降では、その統合ネットワークを支える技術を、基本からご紹介したいと思います。
第3回:「工場でも必要な、IPアドレスとネットワークデザインの考え方」
筆者プロフィル
門脇広平(かどわき こうへい)
ネットワンパートナーズ マーケティング&ビジネス開発部
2001年より、ネットワークを中心とした情報通信インフラ設備の提案・導入に従事。文教/製造業/サービスプロバイダーなど多種多様な市場で提案活動を実施。近年では、特に製造業を中心としたIoTビジネス推進を中心に活動中。
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