全員参加の生産保全、TPMとは何か?:いまさら聞けないTPM(1)(4/4 ページ)
本連載「いまさら聞けないTPM」では、TPMとは何か、そして実際に成果を得るためにどういうことに取り組めばいいかという点を解説していく。第1回となる今回は、まず「TPMとは何か」について紹介する。
TPM流もうける方程式とは
TPMではもうけ(利益)を阻害する要因をロスと呼び、これを排除・予防することによりもうかると考えます。つまり「ロスを『減らす』活動」と「ロスを『防ぐ』活動」がTPMのコア活動を支えており、これによりロスのゼロ化が達成できて利益が得られるということです。
この考え方を「TPM流もうける方程式」として整理すると、図4のようになります。企業のもうけ(利益)は、ロス・ゼロ化の結果によりもたらされます。ロス・ゼロ化は、ロスを減らす活動とロスを防ぐ活動の2種類の活動で可能となるのです。
ロスを減らす活動とは「生産性向上活動」と位置付けており、受注から出荷までの生産システムにおいて、現在発生しているロス(例:故障、不良、在庫)を定量的に把握し、把握したロスの再発対策を行い、ロス発生量を減らして生産性の向上を図ります。対策効果が企業利益に直結する「真のもうけ」が得られるように仕掛けることも、この活動の大切なポイントになります。
ロスを防ぐ活動とは「信頼性向上活動」と位置付けています。この活動はTPM固有の特色といえるものです。生産システム上で発生しているロスを減らした後、再発させない維持管理(未然防止)を徹底することに注力します。さらに、過去発生していたロスの再発防止だけではなく、将来発生が予想されるロスを未然防止する活動にも取り組むことになり、ロスのゼロ化を達成し競争力を育むことになります。
保全活動とは「ロスを生む要因とその発生プロセスを管理すること」を意味します。つまり、故障を防ぐためには、故障の要因である設備の劣化と劣化の成長過程を管理し、故障に至る前に劣化の復元を行い、故障を防ぐ。これが保全であり、TPMの根底にある哲学になります。「全(まったき)を保つ」ために恒常的にあるべき姿を描き、その実現に向けて行動することが競争力になります。
「ロスを減らし、そして防ぐ」という考え方を全員で実践することで、利益(もうけ)が増大します。また全員参加により、参画型経営に貢献できる自主自立型の人材育成が図れて、もうける企業体質が実現できるとTPMは考えているのです。
次回以降は、ロスの把握やロス撲滅に向けての具体的アプローチを解説します。
筆者プロフィル
和泉高雄(いずみ たかお)
日本能率協会コンサルティング 取締役 TPMコンサルティングカンパニー長
1984年、日本能率協会入職、日本プラントメンテナンス協会、JIPMソリューションを経て現職。早稲田大学 理工学術院 非常勤講師。日本プラントメンテナンス協会 TPM優秀賞審査員。工学院大学(生産機械工学科)、慶應義塾大学(経済学部)卒業。
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