次世代サラウンドビュー開発が本格化、ルネサスがHDカメラ映像伝送用ICを投入:車載半導体(2/2 ページ)
自動車の前後左右に設置した車載カメラの映像を使って、車両の周囲の状態を確認できるサラウンドビューの次世代システムの開発が進んでいる。より高画質が求められる次世代サラウンドビュー向けに、ルネサスがHDカメラ映像伝送用ICを開発した。
イーサネットだからできること
車載カメラネットワークに、イーサネットであるEthernet AVBを使うことには、HD映像データを低遅延で伝送できること、UTP利用によるワイヤーハーネスの軽量化とスリム化の他にも幾つかのメリットがある。
まず、オフィス内のLANと同様に、スイッチングハブを活用することで、複数の車載機器に車載カメラの映像を配信できることだ。従来のアナログ方式の映像データを使うサラウンドビューの場合、表示用のディスプレイを搭載する車載情報機器に情報を一旦集約する必要があり、そこから後席用のディスプレイなどにサラウンドビューの映像を表示するには別のデータ伝送の仕組みが必要だった。
次に、映像データを取得する車載カメラや、映像データを受け取るディスプレイの追加や取り外しを容易に行えることが挙げられる。現在の自動車開発では、モジュールプラットフォームの採用により、車両グレードや仕向け地に合わせてカスタマイズできる柔軟性が求められている。R-Car T2はモジュールプラットフォームに適した柔軟性があるというわけだ。
この他、消費電力を定格で40mWにするとともに、パッケージサイズも6×6mmと業界最小サイズに仕上げた。
ルネサス エレクトロニクスは量産開始を2016年12月、月産50万個になるタイミングを2017年9月としている。つまり、R-Car T2を用いた次世代サラウンドビューを搭載する車両の投入時期は2017年になるとみられる。
フリースケールとLVDS陣営がライバル
R-Car T2のライバルになるのは、同じEthernet AVB対応の車載カメラネットワークICを手掛けるFreescale Semiconducutor(フリースケール)だ。同社のICを使ったサラウンドビューは、BMWのSUV「X5」などに採用車種を拡大しており、ルネサスより先行している。さらにフリースケールは、Ethernet AVBに対応する物理層を集積した新製品も2014年4月に発表している(関連記事:車載イーサネット導入の起爆剤になるか、フリースケールがマイコンにPHYを内蔵)。後発のルネサスは、国内自動車メーカーとの太いパイプを生かして採用事例を広げ、フリースケールに対抗していく必要がありそうだ。
R-Car T2のフリースケール製品に対する優位性は、定格で40mWという低消費電力性能と6×6mmサイズの小型パッケージによる、車載カメラモジュール筺体を小型化しやすい点になる。車載カメラの映像データのエンコード方式についても、フリースケール製品が採用するモーションJPEGよりも、ルネサスのH.264の方が高画質で低遅延だとしている。H.264が、サラウンドビューだけでなく他の車載機器に映像データを活用しやすい方式であることも重要だという。
R-Car T2にとって、LVDS方式の車載カメラネットワークICも競合になる。Texas Instrumentsの「FPD-Link III」やMaxim Integrated Productsの「GMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)」などだ(関連記事:「同軸ケーブル対応SERDESが最適解」、マキシムが車両内の映像データ伝送で提案)。LVDS方式は、イーサネットのような規格に準拠した汎用性はないものの、数Gbpsに達する伝送速度により、車載カメラの映像データのエンコードが不要な点が魅力になる。
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