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次世代サラウンドビュー開発が本格化、ルネサスがHDカメラ映像伝送用ICを投入車載半導体(1/2 ページ)

自動車の前後左右に設置した車載カメラの映像を使って、車両の周囲の状態を確認できるサラウンドビューの次世代システムの開発が進んでいる。より高画質が求められる次世代サラウンドビュー向けに、ルネサスがHDカメラ映像伝送用ICを開発した。

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 自動車の前後左右に設置した車載カメラの映像を使って、車両の周囲の状態を確認できるサラウンドビュー。日産自動車が2007年に開発した「アラウンドビューモニター」を皮切りに、各社の車両に広く採用されるようになった。

日産自動車の「アラウンドビューモニター」
日産自動車の「アラウンドビューモニター」 出典:日産自動車

 サラウンドビューの登場から間もなく10年が経過しようとしている現在、さらなる機能進化が求められるタイミングと言っていいだろう。開発が進められている次世代サラウンドビューで最も重要な改良ポイントは、車載カメラから得られる映像の高画質化になる。従来のサラウンドビューは、車載カメラからの映像出力はアナログ方式であり、現時点で広く利用されるようになったHDやフルHDのデジタル映像と比べると、高画質とはいえないからだ。

 そこで次世代サラウンドビューでは、車載カメラから出力する映像をデジタルHDに変更することで高画質化を果たそうとしている。ここで問題になるのが、データ容量の大きいHDの映像データを伝送する際に発生する遅延だ。車載カメラからの映像が遅れてディスプレイに表示されたとすると、そのディスプレイの表示内容から決定するドライバーの操作判断も遅れることになる。

 この問題を解決すべく、次世代サラウンドビュー向けに、大容量の映像データを遅延なく伝送できる車載カメラネットワーク向けICの開発で半導体メーカー各社がしのぎを削っている。

車載カメラを運用する上で必要なEthernet AVBの4つの規格に準拠

 ルネサス エレクトロニクスは2015年9月9日、車載情報機器向けSoC「R-Car」の新シリーズとして、車載カメラネットワーク向けの「R-Car T2」を発表した。同日から単価2000円でサンプル出荷を始める。量産は2016年12月から開始し、2017年9月時点で合計月産50万個の出荷を計画している。

車載カメラネットワーク向けSoC「R-Car T2」
車載カメラネットワーク向けSoC「R-Car T2」。従来のR-Carは、プロセッサコアにARMの「Cortex-Aシリーズ」を用いる大規模なICだったが、R-Car T2はプロセッサコアに「Cortex-M3」を用いており、製品種別で言えば「車載マイコン」と言って差し支えない(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 R-Car T2は、車載カメラからの映像データを伝送する方式としてイーサネットをベースとするEthernet AVB(Audio Video Bridge)のコントローラを搭載している。元は家庭内でのマルチメディア配信をイーサネットで行うために開発されたEthernet AVBだが、現在は車載カメラネットワークが主な用途に挙げられており、単純に車載イーサネットと呼ばれることも多い。

 Ethernet AVBは幾つかの規格から構成されているが、R-Car T2は、それらのうち複数の車載カメラを運用する上で必要な4つの規格に準拠している。4つの規格とは、送信側から受信側への一定のバンド幅を確保するIEEE802.1Qt、システム全体を1μs以下で同期させることを目指すIEEE802.1AS、優先パケットが帯域幅を超えないように平滑化するトラフィックシェーピングを行うIEEE802.1Qav、そしてAudio/Videoデータのパケットフォーマットを規定するIEEE1722である。

「R-Car T2」におけるEthernet AVB対応
「R-Car T2」におけるEthernet AVB対応(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 ただし、これらの規格に準拠したコントローラを搭載するだけで、HDの映像データを遅延なく伝送できるわけではない。Ethernet AVBは、ワイヤーハーネスに軽量のシールドなしツイストペアケーブル(UTP)利用できる点が長所として挙げられている。しかし、UTPを使う場合、伝送速度は100Mbps以下になる。この速度で、車載カメラのHD映像データをそのまま伝送しようとすると、サラウンドビューで避けなければならない遅延が発生してしまう。

 このため、Ethernet AVBを用いるサラウンドビューでは、車載カメラで撮影した映像データを何らかのコーデックでデータ量を減らしてから伝送する。R-Car T2は、独自のH.264エンコーダ「iVCP1」を用いて高画質で低遅延のエンコードを実現した。

エンコーダによる画質の違い
エンコーダによる画質の違い。H.264は、エンコード前の原画と同様に文字を読めるが、モーションJPEGは文字が読めない(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 さらに、データ伝送の遅延を少なくするため、CPUなどのリソースやフレームバッファなどの外部メモリを使わずに、エンコードからEthernet AVBのデータ伝送の処理を行えるような構成にした。エンコード開始からEthernet AVBのデータを物理層ICに伝送するまでの処理時間は1ms以下に抑えている。

エンコード開始からEthernet AVBのデータを物理層ICに伝送するまでの処理時間は1ms以下
エンコード開始からEthernet AVBのデータを物理層ICに伝送するまでの処理時間は1ms以下(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

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