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Gbps時代を迎える車載情報系ネットワーク(1/7 ページ)

現在、欧州の市場を中心に、従来よりも高速なネットワーク技術を用いる車載情報機器の開発が進められている。数年前までMbpsのレベルであったネットワーク通信速度は、現在では1Gbpsを優に超えるようになってきている。本稿では、まず車載情報機器のネットワーク技術にGbpsクラスの通信速度が必要になっている背景を説明する。その上で、高速の通信速度に対応する車載通信用ICの動向についてまとめる。(本誌編集部 取材班)

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HDコンテンツの普及と車載カメラの進化が引き金

 現在市販されている自動車は、数多くのECU(電子制御ユニット)を搭載している。高級車の場合、ECUの搭載数は50個以上に上ると言われている。自動車の機能を実現する際には、これらのECUを互いに連携させる必要がある。この連携において、最も重要な役割を果たすのが車載ネットワークである。

2種類のネットワーク

 車載ネットワークは、大まかに2つに分けることができる。1つは、走る、曲がる、止まるなどの走行系の機能をつかさどる車載制御系ネットワークである。この種のネットワークは、1980年代までは各自動車メーカーが独自の仕様で展開していた。しかし、1990年代以降は、CAN(Controller Area Network)が広く利用される規格となった。現在は、低コストで利用できることを特徴とするLIN(Local Interconnect Network)や、より高速の通信が可能な次世代規格のFlexRayなども登場している。これら車載制御系ネットワーク規格は、通信の信頼性が重視されることもあって、伝送速度はあまり高くない。CANは最大1メガビット/秒(Mbps)で、FlexRayでも最大10Mbpsである。

 もう1つのネットワークは、カーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)、カーオーディオ、カーエンターテインメントシステムなどの車載情報機器に用いられるものである。これが本稿のテーマである車載情報系ネットワークだ。車載情報系ネットワークは、車載制御系ネットワーク上でやりとりされる制御信号よりも、はるかに容量の多い映像データや音楽データを扱う必要がある。このため、比較的高い伝送速度が要求される。

 車載情報系ネットワークの規格としては、欧州の自動車メーカーが中心になって策定しているMOST(Media Oriented System Transport)や、パソコンなどに用いられているシリアルバス規格IEEE 1394をベースに開発された1394 Automotiveが知られている。MOSTには、伝送速度が25MbpsのMOST25、同50MbpsのMOST50、同150MbpsのMOST150という3つの規格がある。一方、1394 Automotiveの伝送速度は、最大800Mbpsとなっている。

 主に音楽データを伝送する用途に用いられているMOST25とMOST50は、欧州の自動車メーカーを中心に100車種以上に採用されている。これに対し、MOST150と1394 Automotiveは、より容量の大きい映像データを伝送することを目的として新たに開発された規格であり、現時点では量産車には採用されていない。ただし、MOST150は、ドイツAudi社が2012年発売の「Audi A3」に、同じくドイツDaimler社が2013年発売の「Mercedes-Benz S-Class」に採用する予定を発表している。1394 Automotiveについては、本田技研工業の開発部門である本田技術研究所が、カーエンターテインメントシステムの用途での評価を開始したことを2009年4月に明らかにしている。

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