富士通が次世代農業でベンチャーと協業、ICTと生体情報の融合へ:製造マネジメントニュース
富士通が施設園芸分野における新たな生産手法の開発に向けて、ベンチャー企業のPLANT DATA JAPAN(PDJ)との協業を発表。富士通が提供している農業向けのICT技術と、PDJの植物生体情報の測定・解析技術を組み合わせた次世代農業技術の開発を目指す。
富士通は2015年5月8日、施設園芸分野において光合成活性情報や葉の大きさ・枚数といった植物生体情報とICTの活用による農業の高度化を目指し、ベンチャー企業のPLANT DATA JAPAN(以下、PDJ)と協業すると発表した。富士通が取り組む農業向けのICTサービスと、PDJが持つ植物の生体情報の計測・解析技術を組み合わせ、次世代農業の実現を目指すとしている。
富士通は2012年から食・農業分野向けのクラウドサービスである「FUJITSU Intelligent Society Solution 食・農クラウド Akisai」(以下、Akisai)を提供している(関連記事)。同年10月からは、施設園芸向けのサービスである「施設園芸SaaS」を提供している。これは温室内の温度や湿度などの各種データをクラウド上に蓄積し、温室内の暖房機や換気扇などの機器をコントールできるものだ。
こうしたICTを活用した農業への取り組みは既に行われつつある。しかし富士通によれば、植物の生育状態の見極めに必要な生体情報の計測は目視による観察などで行われていることが多く、施設園芸分野では国内外を問わず、新たな計測手法の確立やそれらを活用した高度な農業の実現が求められているという。
今回富士通が協業を発表したPDJは、愛媛県松山市に本拠を置く2014年創業のベンチャー企業。愛媛大学農学部の高山弘太郎准教授が開発した植物計測手法を活用した新たな栽培技術の確立を目指し、植物生体情報を用いた計測や解析技術の提供、コンサルティングなどのサービスを手掛けている。
今後両社は、富士通のICT技術とPDJの植物の生体情報計測・解析に関する技術や知見を融合させ、環境制御と栽培管理を統合的に組み合わせる統合環境制御の実現を目指すとしている。具体的には、栽培中の植物の生体情報や施設内外の環境情報を計測して可視化することに加え、特定の時間帯の気温設定が適正生育の阻害要因であると分析し、自動で環境の改善を行うといった作物の収量・品質向上に貢献するシステムの提供を目指すという。
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