「植物工場」はシャープの目指す「違う未来」になりうるのか――中東で実証実験:製造ITニュース
シャープは、UAEのドバイでイチゴ植物工場の実証実験を開始した。シャープの持つLED照明やプラズマクラスター技術、光制御技術などを用い、2015年までに「植物工場」の事業化を検証する。
シャープは2013年9月20日、アラブ首長国連邦のドバイにある販売会社SMEF(Sharp Middle East Free Zone Establishment)の敷地内にイチゴを栽培する「植物工場」の実験棟を設置。9月から「植物工場」の事業化に向けた実証実験を開始した。
植物工場とは、施設内でLED照明や空調、二酸化炭素、水分や肥料などを人工的に制御し、季節や外部環境に影響されずに農作物を生産できるシステムのこと。ITや照明技術などを活用し、安定した環境を作り出すため、1年中安定した生産が可能な他、農地以外でも設置可能な点や、無農薬生産が可能である点など、多くの利点がある。一方で、初期投資、運営投資ともに大きくなる他、栽培ノウハウが今は限定的であるなどの課題があるといわれている(関連記事:野菜の工場生産本格稼働へ――成否のカギは出口戦略と製造マネジメント)。
植物工場の事業化へ
シャープでは、大阪府立大学とともにイチゴの栽培技術の共同研究を行っており、約5年前から大阪府堺市の工場「グリーンフロント堺」で植物工場の実証実験を進めてきた。LED照明を用いた光制御やプラズマクラスター技術を活用した施設内の空気管理、温度や湿度のモニタリングなど、同社技術が活用できるとし、ノウハウの蓄積を進めている。
今回は、環境が過酷で「植物工場」への需要がありそうな中近東で実証実験を行うことで、事業化への可能性を具体的に探っていく狙いだ。現地での生産により品質が維持できるか、ノウハウの獲得を目指すとともに、「植物工場」のエンジニアリング事業を展開する現地パートナー企業の獲得に取り組んでいく。
実証実験を行うSMEFは、ドバイのフリーゾーン内に設置されており、販売会社と倉庫を併せた施設となっている。その倉庫の一部を実験棟用に間借りをし、実証実験を行う。実験棟の建屋面積は108m2だが、作付け面積は約20m2。イチゴの月間生産能力は3000個を計画しているという。
「シャープとして植物生産を行うわけでなく植物工場の事業化を探っていく。日本産のイチゴは高級果物として中近東をはじめ人気がある。中東は過酷な環境の一方で所得が高い層も多く、より具体的な事業化の道のりが描きやすい」(シャープ広報)としている。
日本において植物工場は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)をめぐる問題や食料自給率の低迷により、農業強化が課題となることなどから、ここ最近急速に注目を浴び始めている。既に日清紡ホールディングスが独自ブランドのイチゴを発売するなど、事業化を進めている他、富士通グループが2013年7月に低カリウム野菜の実証事業を開始している(関連記事:富士通が野菜を作る!? ――半導体のクリーンルームを転用した植物工場を設立)。
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