国内回帰はあるのか!? 製造業の国内設備投資、業績回復しているのに1.7%減:モノづくり最前線レポート(3/3 ページ)
日本政策投資銀行は、大企業の設備投資の状況について調査した「2014年度設備投資計画調査」をまとめ、その概要を発表した。決算などにおける企業の業績回復は進む一方で国内設備投資の減少傾向が続いている現状が明らかとなった。ただ2014年度以降は国内向け設備投資増加が計画されており、国内回帰の動きが強まる兆しも見え始めている。
国内生産は技術や生産性向上の基盤
これらの「国内生産を継続する理由」として、最も多いのが当然ながら「国内需要への対応」で全回答者の70.7%が理由として挙げている。続いて「技術・商品開発のための生産基盤が必要」(34.9%)、「国内生産による高い生産性」(32.4%)が続いている。
ただ、これらの上位の中で2013年度調査と比較すると「国内需要への対応」(−5.9%)や「技術・商品開発のための生産基盤が必要」(−12.4%)とした回答者の比率は下がっている。逆に2014年度調査で増えた回答としては「国内生産による高い生産性」(+2.6%)、「国内サプライチェーンの存在」(+4.9%)など、国内の高度なモノづくりの結び付きを評価する声が高まっている。
一方で、2014年度調査で特徴的なのが海外進出リスクを懸念する回答だ。「技術の海外流出に対する懸念」とした回答が、9.0%から12.3%へ増えた他、「海外の法・制度面の不安」が0.5%から2.9%に増加。初期投資の大きさや人材確保の難しさを挙げた回答も増えている。ここ最近、チャイナリスクやタイの政情不安、為替の問題など、海外進出のリスクを考えさせられる状況が多く発生しており、これらを気にする動きが強まっていると考えられる。
国内には何を残すべきか
製造業が今後も「国内に残すべきと考える機能」については、「企画・経営管理」(79.4%)、「資金調達」(43.8%)などの本社機能に加えて、「研究開発(基礎)」(59.4%)、「研究開発(応用・試作)」(49.9%)、「マザー工場(基幹部品生産など)」(54.5%)などが高い比率を占めた。また「高付加価値製品の量産」については27.0%が国内に残すとしている。一方で「汎用品の量産」とした回答は7.6%で、日本で作った研究結果や量産モデルを海外に展開していくことを想定している企業が多い傾向が見られている。
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