どうする?内部留保――業績回復も設備投資は抑える傾向が鮮明に:製造マネジメントニュース
財務省が発表した法人企業統計調査によると、2013年1〜3月期の製造業の設備投資は8.3%減となった。2012年末からの景気回復基調により、経常利益は前年同期で28.3%増となったものの、投資には慎重な現状が明らかとなった。
財務省は2013年6月3日、2013年1〜3月期の法人企業統計調査結果を発表。製造業の売上高は前年同期比6.6%減となったものの、経常利益は前年同期比28.3%増となり、回復基調が鮮明となった。ただ一方で設備投資については、8.3%減となり増益分を投資に回す積極的な動きはなく、慎重な姿勢が目立った。
同調査によると、製造業の売上高は前年同期比6.6%減の97兆7453億円。前年同期よりは下回ったものの、2012年4月以降の各四半期の中では最も多い売上高となった。化学関連が3.5%の増収となった他、金属製品も同5.8%増となった。一方で、自動車などの輸送用機械、鉄鋼、情報通信機器は同10%以上の減収となっている。
ただ、損益面では回復傾向が目立った。経常利益は同28.3%増の5兆1170億円となり、2012年10〜12月期と連続で前年同期比20%以上の増加を示した。特に鉄鋼では同16倍以上の経常利益となった他、電機関連が同66.5%増、石油・石炭が同52.4%増、金属製品が同43.5%増、輸送用機械が同34.0%増、化学関連が同28.2%増、生産用機械が同26.5%増と、各産業が大きな回復ぶりを示した。
業績が回復傾向を示す一方で、設備投資は引き続き減少傾向だ。2013年1〜3月期の設備投資は、前年同期比8.3%減の3兆8519億円となり、2012年10〜12月期に引き続き前年同期比で1割近い減少となった。業績が低迷する電機関連が同31.0%減と削減を進める他、生産用機械や鉄鋼も同20%以上減となるなど、投資を抑える動きが目立った(関連記事:ソニー、2013年3月期で最終黒字化――今期の設備投資は半導体中心に)。一方で、石油・石炭が同11.5%増、輸送用機械が同8.6%増、化学関連が同8.6%増など、3分野では設備投資は増加した。
今回の結果により、企業業績は回復傾向にあるが、業績回復がそのまま設備投資にはつながっていないということが明らかとなった。「一部の革新活動意外では、基本的には新たな投資をするのではなく生産性向上を中心に考えていく」(トヨタ自動車代表取締役社長 豊田章男氏)(関連記事:トヨタ、今期の自動車販売目標は910万台――設備投資は現状維持)とするなど、まだ多くの企業が投資に慎重な姿勢をとっている。業績回復で生み出された内部留保を今後どのタイミングでどう生かすのかに注目が集まる。
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