ホンダが2工場を新設、飲食料品業界はASEANへ投資:製造マネジメントニュース 工場投資フラッシュ
「アベノミクス」効果もあり日本企業も業績好転が目立つが、製造現場への投資動向はどうなっているだろうか。5月前半の工場投資に関する発表を振り返ってみた。
1ドル100円突破など安倍晋三政権の誕生以降、輸出を行う製造業にとっては明るい話題が続く。4月末から5月にかけて発表が続いている2013年3月期の業績も好転する企業が続出し、再成長に向けた明るい材料が出てきた。5月前半は好決算を残した企業が、生産現場に積極投資する姿勢が目立った。
ホンダは2工場の建設を発表
2013年4月26日の決算発表後、2工場の新設を発表したのがホンダだ。同年5月3日にメキシコに四輪車向けの新トランスミッション工場の建設を発表した他、同年5月15日にスポーツカー新型「NSX」を生産する米国生産工場の設立を発表した。
メキシコの新工場は、四輪車工場を建設しているグアナファト州のセラヤ工場敷地内に、新たに約4.7億ドル(約447億円)を投資して建設する。2015年後半に稼働を開始し、年間で約70万台規模の四輪車向けトランスミッションを生産する。これによりホンダの北米におけるトランスミッションの年間生産能力は、現在の137万5000台から2016年には200万台以上となる計画だ。
一方、米国の新工場「パフォーマンス・マニュファクチュアリング・センター」は、オハイオ州にあるホンダR&Dアメリカズのオハイオセンター近くに約7000万USドル(約66.5億円)を投資して建設。2015年に量産開始が発表されている新型NSXの2015年の戦略生産拠点とし、新型NSXは同工場のみで生産される予定だという(関連記事:2013年のホンダはハイブリッドで攻勢、車載リチウムイオン電池も3倍に増産)。
ホンダは2013年3月期決算では売上高が前期比24.3%増の9兆8779億円、営業利益が同2.4倍の5448億円、純利益が73.6%増の3671億円となるなど好調。自動車販売台数も過去最高を記録するなど、投資を続けることで勢いを加速させる。
飲食料品業界はASEAN強化
一方、経済成長が続き生産地としてだけでなく市場としての魅力を増すASEAN市場に向けては、飲食料品メーカーが新たな工場建設や工場の稼働を発表した。
ハウス食品は同年5月7日、ベトナムのアマタ工場竣工(しゅんこう)を発表した。資本金は140億ドルで工場敷地面積は3万平方メートル、工場延床面積は5000平方メートル。5月中旬から粉末デザート製品の製造・販売を開始する(関連記事:ベトナムは「チャイナプラスワン戦略」の選択肢なのか)。
ポッカサッポロフード&ビバレッジは同年5月10日、ペットボトル飲料の生産能力増強策としてマレーシアに新工場を建設することを発表した。果汁、スポーツドリンク、乳性飲料、お茶、ミルク入りコーヒーなどペットボトル飲料の生産を行い、年間600万ケースの生産能力を備える計画だ。総工費は3420万ドルで2014年4月の本格稼働を目指している(関連記事:チャイナプラスワン戦略におけるインドネシアとマレーシアの「チャンスとリスク」)。
その他、包装資材大手のレンゴーが米国ハワイ州に段ボール新工場の建設に着手。また昭和電工がリチウムイオン電池包材であるアルミラミネートフィルムの生産能力増強を決定し、現在増強中の国内の彦根工場(滋賀県彦根市)の追加増強を決めた。2014年末の生産能力を2013年末比で1.5倍にする計画を示している。
国内工場の動向は?
輸出が有利になる円安への反転により国内に再投資する動きに期待する声もあったが、今回の発表ではほとんどが海外向けの投資となった。
「国内に残す生産拠点は、日本だからできる高度な技術が必要なもの、もしくは人件費がそれほど掛からない装置産業の2つの形に集約。その他の拠点は生産だけでなくモノづくりのノウハウの技術集積拠点として活用を進めていく」(ソニー執行役EVP CFOの加藤優氏)など、為替が有利な状況になっても、国内生産拠点の意義が問われる状況は続いている。
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