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町工場にとって、最も面白い時代が到来心技隊流「未来を創るヒント」

今回登場するのは、心技隊「スーパーガヤ“壇”長」こと五光発條の村井秀敏氏。「全日本製造業コマ大戦」に初めて参加する際、社内で大反対されたという。そのときの思いや、今後の意気込みについて語った。

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 私は、心技隊に入隊6カ月目の“新人”隊員であるばね屋の3代目だ。ばねは、製品の表になかなか出てこない部品の代表格だ。当社五光発條ではいま、そんな製品の“裏方”であったばねを使った自社製品開発に奮闘中だ。

 リーマンショックに始まって、最近の日本は「7重苦」(円高、高い法人税、自由貿易協定の遅れ、派遣禁止など過剰な雇用規制、厳しい温室効果ガス規制、電力供給の不安、東日本大震災とタイ洪水)といわれている。国内の製造業は、海外生産へどんどんシフトし、開発試作さえ現地化が叫ばれている。そんな中、「これから100年後も、ここ日本でばね屋でいられるように人生をかける!!」と私は宣言して、2010年9月に代取り(代表取締役)に就任した。

 国、大手企業、景気、世間、時代などの変化を期待しても、何も始まらないし、何も解決しない。「会社を継続して経営できない理由」を挙げてみたところで、飯の種にもならない。「問題を自責化した者にしか、進化はない」ということで、当社では、2008年ぐらいから、自社製品などを含めた企画開発プロジェクトや、異業種転換を含めた革新事業プロジェクトなどを立ち上げ、現状打破への道筋を探ってきた。

 今思い返せば、それはしょせん、現実逃避にしかなっておらず、結局、結果を残すことができていなかった。そんな折、心技隊の緑川隊長(ミナロ 緑川賢司氏)と出会った。

コマ大戦に参加してみた

 緑川さんから、「テクニカルショウヨコハマ 2012」の心技隊ブースで「全日本製造業コマ大戦」を開催するということを聞き、「これが、状況打開のきっかけになれば」と思い、当社も参加してみた。大会用のコマ製作は、当社にとって初めての「図面のないモノづくり」となった。

 コマ大戦出場は、最初、従業員たちから大反対された。コマの製作を任せた製造担当者たちは、戸惑い、悩み、悪態をつき、嫌がっていた。それが、だんだんと自主的に動き出すようになり、自らアイデアを口に出すようになった。「最強のコマ」をキーワードに、材料選定、形状設計、回し方など、全て自分たちで考え、開発してくれた。時間を忘れて試行錯誤し、最強のコマを作り上げてくれた。私を含む皆が、それまですっかり忘れていたモノづくりの楽しさや凄さを思い出し、誇りと夢を取り戻すことができたのではないかと思う。

 過去の当社は、今まで「QCDS」は実践できて当たり前。従業員たちは、ほめられることなく、失敗だけをとがめられてきた。そんなモノづくり現場の様相が、本当に日常になってしまっていた。私も含め、暗いトンネルを当てもなく、さまよっている感じがしていた。

 いきなり従業員に、「好きなことやってもいいよ! 新製品、失敗してもよいから開発してよ。遊びながら適当に」と言っても……、今まで経験がないので、動きたくても、どうしたらいいか分からず、動けないものだった。コマ大戦の参戦は、当社にとって、そのよいきっかけとなった。

 現状打破し、業務改善ではなく、革新までしないといけない町工場こそ、コマ大戦に参加してみてはと思う。自社がアピールできることにより、もともとの生業(なりわい)の拡張や拡販がかなう上、イノベーションを楽しみながら発揮する社風まで手に入る。かくいう当社自身がそうだった。

 最初こそ参加に大反対していた従業員たちも、今では皆、ワクワクする気持ちを抱きながら、日々業務に取り組んでいる。そして、これまでなかなか進まなかった、「製品の“裏方”であったばねを使った自社製品開発」。この難問についても、今度こそ! 皆さんを楽しませるべく、創意工夫しながら取り組んでいる。

「スーパーガヤ壇長」

 私は「お金より先に、心でつながること」を理念とする心技隊の取り組みに非常に感銘を受けた。実際に皆に、その活動をもっと知ってもらいたいと思ったし、その手助けもしたいと考えて、心技隊への入隊を決めた。

 NHKの番組にコマ大戦が登場した際、「何だー! あのコマはー!」と言った瞬間の私の顔がアップで取り上げられた。コマ大戦中、一生懸命大きな声を出し、皆を応援する私の印象が強かったのか、心技隊の仲間からは「スーパーガヤ」と呼ばれるようになった。これからも芸人トーク番組の「ひな壇芸人」のように、ひな壇から積極的に声を出したい。しかも、平の壇“員”ではなく、壇“長”でありたい。合わせて、「スーパーガヤ壇長」。製造業は、声を出すことが苦手な人が多い。心技隊のスーパーガヤ壇長として、自ら声を出して、製造業の皆をリードし、皆で元気になりたい。

楽しみながら変化したい

  生物は、死を感じないと変化しない。人間も、そして中小製造業もそうだ。どうせ変化しなくちゃいけないなら、楽しみながら行動したい。考え方、動き方次第では、今、町工場にとって、「最も面白い時代」が到来していると思う。まだまだ諦めない人々と、あがいてあがいて、もがいてもがき合いましょう。

Profile

村井 秀敏(むらい ひでとし)

1個1円以下の量産工場のばね屋の3代目。2000年より小ロット多品種の開発試作に対応。男3兄弟で力を合わせてグローバル展開中。100年後もここ日本でばねを作り続けるために日々奮闘中。心技隊でのポジションは、「広報担当」または「スーパーガヤ壇長」。

五光発條のWebページ



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