ベトナムは「チャイナプラスワン戦略」の選択肢なのか:知っておきたいASEAN事情(11)(1/2 ページ)
巨大な市場や成長性を見込んで中国に進出したものの、中国特有のリスクに悩まされる日本企業。そこで、中国に軸足を残したまま、周辺諸国にも足を伸ばす「チャイナ・プラスワン戦略」が魅力的に見えてくる。では、どの国を選ぶのか。
2012年10月中旬、約1年ぶりにベトナム最大の都市、南部のホーチミン市を訪問しました。ベトナム南部の日系製造会社を対象としたセミナーで講演を行うためです。前回の訪問からたった1年しかたっていませんが、東南アジアの常として、ホーチミン市でも多くの変化が起きていました。
ブランドショップが急増する一方、無いものとは
夕方、タンソンニャット国際空港に着き、市内1区にあるホテルに向かうタクシーの中で最初に気付いたのは、ブランドショップの急増です。市内中心地では、高級ブランドからカジュアルブランドまで、外国資本のブランドショップ進出ブームが起きているようです。来店者は、外国からの観光客が中心ですが、地元ベトナムの人達も少なからず見かけます。一昔前の中国のように、社会主義国ベトナムでも富裕層が形成されつつあるのでしょうか。
他の東南アジアの各都市には必ずあっても、ベトナムに無いものがあります。マクドナルドやセブンイレブン、スターバックスといったファストフードや小売業です。
ファストフードではKFCは進出済みであり、ハンバーガーでは韓国資本のロッテリアがかなり前から進出を果たしています。コンビニでは、意外なことに、ファミリーマートやミニストップなどの日系コンビニが既にベトナム市場へ進出しています。遅ればせながら、業界の最大手であるマクドナルドとセブンイレブンは、これからベトナム進出を計画しているようです。数年後には、ベトナムの各都市にも、赤や緑の看板が目立つようになるのかもしれません。
ただし、スターバックスにとっては、統治時代にフランスが持ち込み、ベトナム人の日常に深く浸透している「ベトナムコーヒー」と言う強敵がいます(図1)。
また、このベトナムコーヒーと同様に「ベトナム料理」になっているものにサンドイッチがあります(図2)。ベトナムのサンドイッチは、バゲット(フランスパン)で作るのが特徴です。もちろん旧宗主国フランスが持ち込んだものなのですが、ベトナムでは主原料の小麦粉に米粉を加えることで、皮は薄めで中はふかふかの独特な食感を出していると聞きました。ちなみに、このベトナム版サンドイッチは、アメリカでも大人気です。主にベトナムからの移民が開いた店なのですが、どこも繁盛しています。
「中国+もう1国」という戦略
さて、この辺で本題に入りましょう。
ここ数年の中国華南地域、華東地域で深刻度を増していた労働力不足、賃金上昇のリスクヘッジとして「チャイナ・プラスワン戦略」が生まれました。2012年9月に発生した反日運動後は、あらためて多くの注目を集めています。リスクヘッジという観点からは、あまり動きの良くない日系企業も、ここに来て海外戦略の見直しを迫られているようです。
なぜ脱中国ではなく、プラスワンなのでしょうか。確かに中国市場の先行きは不安視されています。しかし、絶対的な市場規模が巨大なことに加えて、多少鈍化しているとはいえ7%台後半のGDP成長率(2012年度予測)を放り出して、中国市場から撤退する日系企業はほとんど無いでしょう。加えて、既に多くの日系企業がそれなりの規模の事業投資を実行しており、いまさら引き返せないという現実もあります。
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