海外流出は是か非か、進む日本のモノづくり空洞化:ものづくり白書を読み解く(前編)(1/3 ページ)
製造業の復活は日本経済の復活に不可欠な要素である。経済成長をもたらしGDPを押し上げる効果が高い他、雇用の増加も期待できるからだ。アベノミクスの勢いに乗り、製造業が真の復活を遂げるには、どのような課題をクリアしていくべきか。「2013年版ものづくり白書」から、日本の製造業が抱える課題を明らかにする。
第2次安倍晋三内閣による経済政策、いわゆる“アベノミクス”により、日本経済は長かったデフレから徐々に脱却しつつある。2013年9月13日に発表された政府の月例経済報告では、2カ月ぶりに景気判断を上方修正した他、約1年ぶりに「景気は、緩やかに回復しつつある」と表現。景気が回復局面にあることを認めた。日本経済はいよいよ復活への反転に移ろうとしている。
デフレに苦しめられた製造業が復活するにはまだ時間を要するが、製造業の復活は日本経済の復活に不可欠な要素である。関連経済への波及効果が大きくGDPを押し上げる効果が高い他、雇用の増加も期待できるからだ。製造業はこのまま勢いに乗り、真の復活へとつながっていくのだろうか。また、そのためにはどのような課題をクリアしていくべきだろうか。
そこで、今回から2回に分けて、2013年6月に経済産業省から発表された「2013年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)」(以下、ものづくり白書)を読み解き、日本の製造業が抱える課題について分析する。
海外生産の拡大傾向が加速
バブル崩壊やリーマン・ショックなど幾つもの不況を経験してきた日本の製造業は、この間、自社の価格競争力の低下と日本国内の需要低迷に直面し、もがき苦しんできた。この2つを打開するため積極的に推進してきたのが海外展開だ。
海外への販売拠点・生産拠点の設立は今に始まったことではなく、労働コストが安く成長著しい新興国を中心に、以前から進んできている。機械、電気機械、輸送機械、精密機械といった加工型製造業は以前から海外現地生産に積極的に取り組んできた。最近では繊維製品、紙・パルプ、化学、鉄鋼、非鉄金属といった素材型製造業でも海外現地生産に取り組む企業が増加。工場の新設や国内工場の移転などにより、海外現地生産を行う企業は増加の一途をたどっている(図1)。
自動車の設備投資は国内横ばい、海外増加
では、日本の製造業は海外展開にどれほど注力しているのだろうか。これを知る手掛かりとしてまず注目したのが、海外への設備投資である。ものづくり白書では自動車と電気機械の2業界を例に挙げ、それぞれ最終製品と部品に分けて設備投資の推移を紹介している。
まず自動車だが、最終製品についてはリーマン・ショックで一時減少したものの、依然として増加傾向を維持している。国内の設備投資が1995年度以降、おおむね横ばいで推移しているのと比べると違いは顕著だ。2010年度の設備投資を1995年度と比較すると、国内が約42%と半分以下にまでに下がったのに対し、海外は約196%とほぼ倍増。自動車業界はグローバル最適地生産へのシフトを進めていることから、国内より海外を優先して設備投資を行っていることが分かる(図2)。
また、自動車部品を見てみるとはティア1(ものづくり白書では資本金50億円以上と定義)、ティア2(同3〜50億円未満と定義)、ティア3(同3億円以下と定義)のいずれも、金額こそ国内の方が多いものの、伸びは海外の方が高い。1995年度以降、国内は横ばいから減少で推移しているが、海外に関しては順調に増加している(図3〜5)。
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