日立、産業機械メーカー向けM2Mクラウド型保守・設備管理サービスの外販開始:製造ITニュース
日立製作所は、自社製品を対象に展開してきたM2Mクラウド型機器保守・設備管理サービス「Doctor Cloud」を、国内外の産業機械メーカー向けに外販することを決めた。
日立製作所は2014年2月17日、従来自社製品を対象に展開してきたM2M(Machine to Machine、機械同士が人間を介さずにネットワークを通じて直接情報をやりとりするシステム)クラウド型機器保守・設備管理サービス「Doctor Cloud」を、産業機械メーカー向けに外販することを決定し、提供を開始した。
工場やプラントを支える産業機器は、納入後の安定稼働のため、予防保全による異常発生そのものの抑制や、異常の早期検出による迅速な復旧対応などで、ダウンタイム(運転停止時間)を低減することが求められている。しかし、これまでのアフターサービスでは「定期的にユーザーを訪問して機械の状態を確認する」または「異常発生時にユーザーから連絡を受けて復旧作業を開始する」という対応が一般的で、実質的には最適なタイミングでの予防保全が行われていないという課題があった。
同社が新たに外販を開始する「Doctor Cloud」はこれらの課題の解決を目指すものだ。産業機械に通信機能を持つ制御装置を設置し、M2Mにより機器の動作情報を収集。これらの情報をクラウド上に蓄積し分析を行うことで、予兆診断、予防保全計画、タイムリーな訪問営業ができるようになるという。
自社展開してきたノウハウを外販
日立製作所では、長年にわたる産業機械の設計・製造・保守や工場・プラントのEPC(設計・調達・建設)を手掛けてきた実績とノウハウを持つ。これにITベンダーとしての技術力を併せ、2011年から「Doctor Cloud」を自社製のクレーンや空気圧縮機を対象に展開し、監視、予防保全、故障予兆・省エネ診断、設備保全管理などのアフターサービスとして展開してきた。今回の発表は、これらの自社実践のノウハウを外部にも提供するということだ。
顧客となる産業用機械メーカーに提供するのは、制御装置を含むM2Mクラウドシステムの構築と、産業機械の稼働状況データ分析の支援だ。これにより、産業機械メーカーは、機械の稼働状況を常時、遠隔で把握できるようになり、機械の維持管理のためのコスト低減や、効率的なサービス体制の構築による経営効率向上が可能となるという。さらに、日立製作所のクラウドを活用して初期IT費用を抑えたサービス導入も可能だとしている。
価格は、産業用機器に取り付け機器の情報を取得しクラウドへ送る制御ユニットが1台10万円前後。50〜100点の情報を数秒間隔で取ることを想定した場合で、M2Mクラウドシステムの構築が200万円以下から(システム規模によって変わる)だという。
「Doctor Cloud」サービス提供スキームは以下の通り
- 日立製作所と産業機械メーカー、産業機械メーカーとユーザーとの間で、それぞれサービス契約を締結
- 日立製作所は、産業機械メーカーに代わって、M2Mクラウドの導入と、産業機械メーカーがユーザーに納入した機械から稼働データを収集するシステムを構築。
- 収集した稼働データは、日立のデータサイエンティストにより分析し、産業機械メーカーにその分析結果を提供する。
- 産業機械メーカーは、日立が提供する分析結果を基に、ユーザーに対して各種サービスを提供する。
産業用機械ではM2M活用によるアフターサービスが注目
産業用機械を含む大型機器市場では現在M2M活用による付加価値創出に注目が集まっている。M2MやIoT(Internet of Things)、ビッグデータの活用はビジネスモデルが見えにくいという課題を抱えているが、大型機器のアフターサービスでは、総コストの削減や新たなサービス創出などでメリットが見えやすいためだ。
M2Mの活用では建設機械のコマツの「KOMTRAX」などが有名だが、GEなども「インダストリアル・インターネット」として機器にデータを発信する仕組みを組み込み、付加価値を生み出すサービス創出に取り組んでいる(関連記事:GEが100年にわたりイノベーションを生み続けられる秘訣とは)。
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