GEが100年にわたりイノベーションを生み続けられる秘訣とは:製造マネジメントインタビュー(4/4 ページ)
1892年の創立から100年以上もグローバルのトップ企業として存在感を発揮するGE。主要業務分野を変えながらイノベーションを続けるその秘訣には何があるのだろうか。GEのグローバルリサーチセンター日本代表を務める浅倉眞司氏に、GEのイノベーションへのアプローチと現在重視する技術の方向性について話を聞いた。
GEのビッグデータ活用「インダストリアル・インターネット」
MONOist GEとして力を入れている技術領域はありますか。
浅倉氏 全社をあげて力を入れているのが「インダストリアル・インターネット」だ。これは、IoT(Internet of Things)やM2M(Machine to Machine)により機器から得られる情報を、ビッグデータ分析により読み解き、新たなサービスとして顧客企業に還元する仕組みだ。
例えば、ジェットエンジンやガスタービンなどにデータを発信する仕組みを組み込み、それらのデータをインターネットを介して、GEが独自で運営するデータセンターに蓄積する。これらは、顧客がその機械を使ったときにその機械がどんな状況でどんな使われ方をしているのかの生データだ。この膨大なデータを分析し活用することで顧客にもっと付加価値を提供できないか、というのがテーマだ。
機器の計画外停止の予防や、整備が必要な時期の予測によるメンテナンスのコスト低減など、解析をして有効活用することで顧客に新たなベネフィットを提供できると考えている。2011年には米国のサンラモンにインダストリアル・インターネットのための新たな拠点を設立した。米国の一部では既にサービスを開始しており、今後重要なサービスになっていくと考えている。
新しい製造手法で新たな製造業の形を
MONOist 3Dプリンタ企業の買収など、新たな製造技術の開発にも力を入れていますね。
浅倉氏 3Dプリンタが注目を集めているが、GEでは研究所の中に新たな製造技術を研究開発する「アドバンスドマニュファクチャリングテクノロジー」というチームを設立した。「マテリアル」「製造プロセス」「製品要素(シール、ベアリングなど)」「その他」の4つの部門で研究開発を進めている。3Dプリンタについてもこの中で研究している。
米国では製造業の国内回帰の動きが出つつある(関連記事:製造業の米国回帰を後押しする“4つの波”とは?)。アドバンスドマニュファクチャリングの研究を進めることで、付加価値の高い技術を目指し、製造業の価値を高めていくことを目指している。このような高度な製造では人件費の安さを求めて工場を海外に移転させる必要がなく、作りたいものを作りたい場所で製造することが可能になる。これからも製造業の新たな形を模索していく。
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