「まねできる技術は守っても無駄、教えてしまえ」日本ロボット学会小平会長:SCF2013 ラウンドテーブル(前編)(1/2 ページ)
SCF2013で開催されたラウンドテーブルセッションでは「日本のものづくりの未来が見える」をテーマに各界の識者が登壇し、日本のモノづくりの現状の課題と将来像を語った。
2013年11月7日に開催されたシステムコントロールフェア(SCF)2013のラウンドテーブルでは、京都工芸繊維大学院教授の濱田泰以氏、大日本印刷理事の黒田孝二氏、日本ロボット学会会長の小平紀生氏、IDEC 常務執行役員の藤田俊弘氏、日本電気計測器工業会 エネルギー・低炭素政策委員会 委員長の石隈徹氏が、日本のモノづくりの強みと弱みについて語り合った。
今回の記事では、特に製造業のモノづくりに直結するテーマについて話した、日本ロボット学会会長の小平紀夫氏の講演内容を前編で、IDEC 常務執行役員の藤田俊弘氏の講演内容を後編でお伝えする。
「失われた20年」はロボットによる生産性向上の時期
日本ロボット学会会長である小平氏は、産業用ロボットから見た製造業の発展の歴史を振り返った。小平氏は、日本の戦後60年の製造業の歴史を振り返ると、1950〜1970年頃の「高度成長期」、1970〜1990年頃の「安定成長期」、その後の「失われた20年」の3つの時期に分かれると指摘。「実はGDPや製造業生産額は高度成長期よりも安定成長期に大きく伸びており、失われた20年では横ばいから微減傾向。ほぼ経済動向と同期する形になっている」(小平氏)。
しかし、製造業の生産性という観点で見た場合、状況は変わってくる。「製造業付加価値(製造業のGDP貢献額)と製造業の従業員数の推移を見ると、従業員数は1990年ごろから大きく減少する中、製造業付加価値は横ばい傾向である。つまり生産性向上により、製造業付加価値を維持しているという状況が見えてくる。これが生産自動化の進化と産業用ロボットの普及による効果だ」と小平氏は指摘する。
変種変量生産に直面する生産自動化とロボット化
60年の歴史の中で「生産」に求められるものも変わってきている。高度成長期は、モノがない時代で同じものを大量に作る「標準品大量生産」が求められた。また安定成長期には、選ぶ豊かさのようなものが求められるようになり、多くのものを少しずつ作る「多品種少量生産」が必要になる。失われた20年では、需要変動が激しくなったことから、多くのものをさまざまなロットで生産する「多品種変量生産」が求められた。そしてリーマンショックを経て現在は、さまざまなモノをさまざまなロットで作る「変種変量生産」が必要になってきているという。
小平氏は「産業用ロボットに求められることも変化している。標準品大量生産ではとにかく機械化が求められたが、多品種少量生産では自動化による柔軟性が求められ、多品種変量生産では、情報に即応する情報化が必要になる。そして今変種変量生産に向かい『知能化』が求められてきている」と話す。
「知能化」は、複数種類の作業を複数ロボットで分業することを意味しており、多機能ロボットによるセル生産を目指すもの。画像センサーや力センサーなどの技術が進化しロボットに多く搭載されるようになったことで利用できる分野が広がってきているという。
一方で産業用ロボット産業に関連する企業にとってはそれぞれに課題を抱えている。「エンドユーザーとなる製造業にとっては国際競争力強化のためのモノづくり革新が必要。一方でロボットメーカーにとっては、製造現場のグローバル化が進む中、市場のグローバル化と国際競争激化に対する対応が求められている。また、間をつなぐシステムインテグレーターにとっては、従来は“経験知”でのシステム構築が多かったが、国際化が進む中でそれらに対応した取り組みが必要になる」(小平氏)
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