「M2M」「IoT」「クラウド」――“つながる技術”が切り開く組み込みの未来:「ET2013」展示会場リポート(1/3 ページ)
2013年11月20〜22日の3日間、パシフィコ横浜において恒例の組み込み関連イベント「Embedded Technology 2013/組込み総合技術展(ET2013)」が開催された。本稿では、多数のブースの中から“これからの組み込み技術”という視点でピックアップした展示デモの内容を紹介する。
2013年11月20〜22日の3日間、パシフィコ横浜で、組込みシステム技術協会(JASA)主催の「Embedded Technology 2013/組込み総合技術展(以下、ET2013)」が開催された(併催:設計ソリューションの必須技術を紹介する「EDS Fair 2013」)。組み込み関連技術のイベントとしては、春に開催される「組込みシステム開発技術展(ESEC)」と並び、国内最大規模のものだ。
主催者の発表によると、出展社数は403社、来場者数は2万1485人でいずれも2012年比(出展者数407社、来場者数2万2813人)では若干減っているが、各社展示ブースは盛況で最新の組み込み技術について熱心に話を聞く来場者で混み合っており、取材で目当ての展示の説明を聞くのも一苦労だった。
前回のET2012では、インテルやマイクロソフトが中心となり「インテリジェントシステム」というキーワードを訴求していた(関連記事:「インテリジェントシステム」のさまざまな“カタチ”をアピールする、インテルとマイクロソフト)。今回のET2013でもこの言葉は聞かれるものの、(データを送るハードウェアという意味での)インテリジェントシステムやIoT(Internet of Things)それ自体よりも、クラウドと組み合わせたシステムやサービスなど、より具体的なアプリケーションに近い展示が見られた。その多くは、企業側からの提案であるが、実際に運用されているシステムも幾つかあった。それでは順に紹介していこう。
今後のIoT市場でもイニシアチブを狙うインテル
例年ETで、最大規模のブースを構えるインテル。前回のET2012で“インテリジェントシステム”を前面に押し出していたが、最近、社内にIoTソリューション事業部を新設したこともあってか、ET2013では(対外的には)“IoT”をキーワードに据えていた。実質的な意味合いが変わったわけではないが、「Quark」プロセッサファミリの発表や、それを搭載したArduino互換開発ボード「Galileo」(関連記事:インテル、「Quark」搭載のArduino互換開発ボード「Galileo」発表)の登場から、同社がこの分野でさらに裾野を広げようとしている姿勢が見て取れる。
ブース中央では、ロボットによる琴の演奏会(関連記事:インテル、ロボットによるお琴の演奏会を開催!? ワークロード集約のメリットを訴求)が行われ、多くの来場者の注目を集めていたが、その横ではもう1体の別のロボットによるデモンストレーションが披露されていた。三菱電機が製造現場向けに開発した障害発生予知システムだ。
同社の「C言語コントローラ」と日本電能の「CIMSNIPER」を組み合わせて、簡単な設定だけでロボットから製造情報(PLC情報、ネットワークを流れる制御情報など)を収集し、解析サーバに送る。ここでのポイントは、ただダラダラと大量のデータを集めて送るのではなく、収集条件を絞って狙ったデータだけを集めることで、後で解析しやすくするという点にある。日本の製造現場では、「何かあったときに使えるかもしれない」とデータをとにかく大量に集めたがるのだが、データが膨大になり過ぎて解析ができず、結果として活用しないままデータが死んでしまっているケースが多い。これに対し、本システムでは「ある状況/あるときのデータ」をすぐに引っ張り出せて、解析しやすいフォーマットで取得できるため、“データを生かす(活用する)”ことができるという。
インテルはハードウェアに加えて、傘下のマカフィー(セキュリティ)とウインドリバー(リアルタイムOS)のソフトウェアソリューションを組み合わせることで、将来ネットワーク接続機器が世界に数百億台になるという時代にも、トータルソリューションを提供できるとアピール。このデモは、インテルCPUの「vPro」テクノロジーとマカフィーのセキュリティソフトウェアを組み合わせたもので、組み込み機器を制御するPCの遠隔監視機能を披露した。制御用PCに攻撃的なパケットやウイルスなどが送られても、それらの実行を阻止。万が一、障害が発生した場合でも遠隔操作で修復できるという
「Windows Embedded」の広範な応用例を示したマイクロソフト
マイクロソフトのブースではパートナー企業とともに、組み込み機器向けOS「Windows Embedded」ファミリーをハードウェアに組み込むことで、さまざまなシチュエーションに対応できる点をアピールしていた(関連記事:高級オーディオ機器からレーシングカーまで――Windows Embedded採用事例)。
富士通ソフトウェアテクノロジーズは、「Windows Embedded Compact BSP for Zynq-7000」(Windows Embedded Compact 2013ベース)とARMプロセッサコアとFPGAを混載するザイリンクスのSoC「Zynq」環境を用い、画像処理はFPGA側に任せ、OSの立ち上げや圧縮画像のネットワーク配信をARMコア側で行わせるデモを披露した。CPUにやらせるには負荷が大きい画像のキャプチャー/圧縮と、ネットワークによる配信を並行動作させられることがポイント。実際の応用例としては、得られた情報をそのままネットワークに流さず、FPGAに演算/解析させたり、暗号化処理をさせたりすることを想定している。
NECが参考出品していた「Windows XP 延命ソリューション」。Windows XPベースの組み込みOS「Windows Embedded Standard 2009」が、来春にサポート期間が終了するWindows XPよりもサポート期間が長いことを利用し、「Windows Embedded 8.1 Industry Enterprise」のゲストOSとして、Windows Embedded Standard 2009を動かすというもの。既存アプリ資産の最新Windows環境への移行が完了したら、Windows Embedded 8.1 Industry Enterpriseをそのまま「Windows 8.1」として使用するというソリューションだ。2014年2月に提供予定とのこと
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