現場の管理監督者必見! 品質管理に必要な注意事項とは?:実践! IE:現場視点の品質管理(18)(4/4 ページ)
本連載で品質管理の考え方、進め方などを紹介してきましたが、今回はそれらをまとめて、品質管理に携わる現場監督者に要求される注意事項を紹介します。
品質は工程で作り込むべし
「品質は工程で作り込め!」という言葉がありますが、最終検査でいくら厳格な検査をしても製品の品質は良くなるわけではありません。製品品質の水準は、当然のことながら、設計段階と製造過程で決まってしまうものなのです。この中で、現場の管理監督者は「製造過程における品質確保に責任を持つ」という重要な任務があります。
企業を訪問すると、どの現場にも「品質第一」という貼り紙の掲示があり、「品質第一で取り組んでいます」と聞きます。しかし、品質管理に熱心なわりには不良率が下がっている様子もなく、具体的に品質を管理しているような形跡がない場合があります。このような現状はなぜ起こってしまうのでしょうか。
直接作業に携わっている人たちは、いつも細心の注意を払いながら仕事を完遂しています。それでも、製造過程で不良が発生してしまうのは“注意力”だけでは防ぎきれない何かの存在があるからです。それにもかかわらず、根本原因の究明をおろそかにして、「作業者の不注意」を不良原因としているケースを数多く見掛けます。
工場とは「決められた時間の中で、顧客の要求する高い品質水準の製品を、安く早く作る場所」ということができます。しかし、製品が出来上がっていく過程の中には、品質を不安定にする5Mに関連したたくさんの要因が隠れています。これらの要因が現れたり消えたりしながら結果的に品質の不安定な状況を招いているのです。従って、この要因を取り除くことが品質の安定化につながっていきます。
幸いなことに、これらの要因のほとんどは測定可能な形で表面化します。この現象や兆候を統計的に把握し、できるだけ初期段階で不良発生要因を取り除くことが不良撲滅の重要な活動です。
現象を統計的にとらえて図示化する手法として「QC七つ道具(特性要因図、チェックシート、ヒストグラム、散布図、パレート図、グラフ・管理図、層別)」があります(関連記事:現場の管理監督者が掌握しておくべき品質管理手法はこれだ!)。管理監督者は、この手法を身に付け、「管理サークル(Plan→Do→Check→Action)」を回しながら品質改善に向けて、たゆまぬ努力を継続していくことが品質管理の全てといっても過言ではありません(関連記事:IEにおける「品質管理」の本質と歴史的経緯)。
◇ ◇ ◇
今回で「実践! IE:現場視点の品質管理」は最終回となります。しかし、品質について、もう少し深く考えてみたいと思います。
企業は、顧客に「品質」を売っているともいえます。すなわち、顧客が品物を購入するということは、その品物の“働き”を買っているのであり、私たちは、その“働き”を作り込んでいくための技術を日々研さんしているわけです。従って、顧客から見た「良い品質」とは、「機能(働き)」だけではなく、必要な使用期間中に、その機能を失うことなく使用できるものでなくてはなりません。そのように考えると、品質の定義は「その製品が備えている特性が、ある定められた期間、その使用目的を果たし得る“働き”」となります。また「次工程はお客さま」という考え方もあります。
以上の2つの考え方に基づけば、製品の機能という狭い範囲の品質を指すのではなく、品物に限らず工場の内外で発生する全ての業務の質が「品質」であると考えなくてはならないのです。このことを念頭に置き業務に取り組むことが重要なことではないでしょうか。
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筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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