「ASIMO」の技術を応用した「高所調査用ロボット」が原子炉建屋内で初仕事:そのとき「PackBot」は見ていた!
ホンダと産業技術総合研究所(産総研)が東京電力 福島第一原子力発電所向けに共同開発した「高所調査用ロボット」が2013年6月18日、当初の予定通り、2号機 原子炉建屋内1階の上部空間の調査を実施。東京電力が調査結果に関する資料を公開した。
ホンダと産業技術総合研究所(産総研)が東京電力 福島第一原子力発電所向けに共同開発した「高所調査用ロボット」(関連記事1)が2013年6月18日、当初の予定通り稼働し、2号機 原子炉建屋内1階の上部空間の調査を実施した。東京電力が翌6月19日に、調査結果に関する資料を公開している。
今回のミッションは、原子炉建屋内の除染作業およびPCV(原子炉格納容器)調査を最初に実施する計画である2号機(比較的線量も低い)を対象とし、高所調査用ロボットの進入が可能な原子炉建屋内1階の西側通路と南西エリアを調査範囲とした。上部にある機器などの除染・遮蔽は、空間線量を低減できる効果があるため、事前に上部空間の線量や干渉物を把握しておくことで、効率的な作業計画を立てることができるという。
今回の調査結果を踏まえ、高所PCV貫通部周辺の調査(STEP2)の実施可否、調査エリアの拡大や他号機への展開を検討。今後の原子炉建屋内の線量低減対策、PCV調査・補修などの作業計画の策定に役立てるとしている。
高所調査用ロボットは、ホンダが同社のヒューマノイドロボット「ASIMO」の技術を応用して開発した「調査用アームロボット」と、産総研が開発した「クローラー式高所作業台車」で構成される。クローラー式高所作業台車のマスト部を伸ばすと最長7mまで到達できる。調査用アームロボットのアーム部は11自由度(関節)を持ち、全長1.7m。最高速度が2km/hで、400mの光ファイバーを用いた有線LANおよび無線LANによる遠隔操作が可能だ。調査用の機能として、「静止画記録」「線量率測定」「温室度測定」「3Dデータ取得(レーザレンジファインダーによる3D形状計測)」などが搭載されている。
今回の調査で投入されたのは、高所調査用ロボット1台と、米iRobotの軍事用ロボット「PackBot(パックボット)」(関連記事2、関連記事3)1台である。さらに、通信途絶時の復旧用救援機として、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)の「Quince2」(関連記事4、関連記事5)もスタンバイしていた。人員体制として、調査現場(ロボットの準備・片付け・運搬)に東京電力社員4人と協力会社社員3人が、免震重要棟(遠隔操作)に東京電力社員5人と協力会社社員2人がそれぞれ配置された。
6月18日12時00分に2号機 原子炉建屋内1階にロボットを投入し、遠隔操作による調査を開始。西側通路および南西エリアの上部壁面の状況調査が行われ、6箇所での雰囲気線量率の測定、5箇所(西側通路天井2箇所、上部壁面3箇所)での干渉物の有無を確認した。上部壁面の状況調査においては、最長で床上4.3mの高所の状況を確認できた。
東京電力 福島第一原子力発電所 2号機 原子炉建屋内1階の上部空間の調査を行う「高所調査用ロボット」の様子。画像は米iRobotの軍事用ロボット「PackBot」からの映像をキャプチャーしたものである(※出典:東京電力)
同日16時14分に調査終了。東京電力は「上部の線量が高いことを確認できたが、下部に対して顕著な差異はみられず。上部空間の狭隘(きょうあい)な状況を確認。機器類の損傷は特に確認できなかった」と調査結果をまとめている。なお、調査範囲の周辺温度は23.6度、湿度は78%(高さ2.5mで測定)。調査終了後のロボットの被ばく線量は、高所調査用ロボットが38.5mSv、PackBotが41.0mSv。ロボットの準備・片付け・運搬などにより、2.0mSvの被ばくを計画していた現場作業人員の被ばく線量は最大0.98mSvであった。
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