QCサークルを超えた小集団活動の効果的な進め方(1):実践! IE:現場視点の品質管理(16)(3/3 ページ)
品質を作り上げるのは、直接仕事に携わっている1人1人です。つまり品質向上のためにはボトムアップからの作り込みが重要です。ボトムアップからの盛り上げに役立つのが「小集団活動」。さて、小集団活動を成功させる4つの基本要素とは何でしょうか。
(3)小集団活動の基本要素
小集団活動の基本要素として、「人」「グループ力」「改善力」「管理者の支援」が挙げられます。小集団活動は、前項で説明したように、「職場の問題を全員参加で自主的に、各種手法などを活用しながら改善・解決していくグループ活動」です。従って、小集団活動の推進に当たっては、グループ員1人1人やグループリーダー、それを指導する管理監督者それぞれの高い能力と、その活動の主体となる豊かな創造力を備えた「人」が重要な役割を担うことはいうまでもありません。そして、人の集合体であるグループとしての力、すなわち「グループ力」が発揮されなければ十分な成果を上げることはできないことも確かです。
小集団活動において、「人」の能力、「グループ力」と「改善力」を効果的に発揮させ、かつ、健全なグループを育成していくためには、「管理者の支援」による適切な指導や推進条件の整備が図られなければなりません。さらに、これらの要素がお互いに作用し合って、職場の問題や課題を解決するための活発な小集団活動が推進されていく体制づくりが欠かせません。
このように、各要素のそれぞれが充実し、相乗効果を発揮することによって、小集団活動の目的である「能力、資質の向上」「職場の活性化」「業績への寄与」が効率よく、かつ効果的に達成されていくわけです。従って、小集団活動の推進に当たっては、この4つの基本要素(人、グループ力、改善力、管理者の支援)の重要性をよく認識し、常に、各要素のレベルアップと活性化を図っていくことが肝要です。次の項で、その方策について少し触れておきたいと思います。
(4)小集団活動の4つの基本要素の強化
小集団活動を推進するには、基本要素、すなわち「人」「グループ力」「改善力」「管理者の支援」の相乗効果を高めることが大切です。これらの4つの要素を組合せ、小集団活動の活性化を図るために、それぞれの要素をレベルアップすれば、小集団活動推進の大きな原動力を生み出していくことができます。
(a)基本要素:人
人は学校教育などを通して学んだ基礎知識や専門知識と、これまでの社会生活を通して培った良識や教養(倫理観や企業理念、企業の行動基準など)の“知力”をベースとして備えています。そして、継続してこれらの知識を深めていくとともに、創造力や統率力、理解力、分析力、表現力、説得力、持続力などの「能力」を研さんしていくことが大切です。さらに、これらの知力や能力を実際の行動力として生かすには、“熱意、士気、気力”を高めていくことが重要です。
(b)基本要素:グループ力
グループ力とは、全員参加によって相乗効果を発揮することです。そのためには、グループの各人が、自ら積極的に問題を見つけ出して自発的に行動する「自主性」が大切です。さらに、グループ全体の前向きな姿勢や積極性などの活力がみなぎっていなければなりません。このように、小集団活動は、共通の目標に対して自主的にグループとしての総合力を発揮していく活動といえます。
少人数の集団の持つ特徴は、グループの人員が増え過ぎると小集団活動への参加の動機付けが抑制されることです。人数の割にはアイデアの数が期待するほどには増加しません。最もまとまりやすい人数は、5〜6人で、グループ力が最も発揮されるといわれています。
(c)基本要素:改善力
小集団活動の狙いは、職場の問題や課題の解決を行うことです。そのため、誰もが、その職場で何が問題であるかという問題意識を持っていなければなりません。“問題意識”とは、「常に、現状に満足しないで、前向きのやり方を求める気持ち」のことをいいます。全員が問題意識を持ち、さらに、問題に対して全員の創意を結集することによって大きな改善が可能となります。また、分析手法や改善手法を習得して全員の知恵と努力で改善を実施していくというプロセスが大切です。さらには、改善の実施に当たっては、早期実行と早期達成が大切です。また、改善の成果については迅速な「T.T(Technical Transfer)」により、組織横断的な拡大を図っていくことも必要です。
(d)基本要素:管理者の支援
管理者は、企業目標の達成に対する重い責任を負い、業務遂行上の権限を有していますが、小集団活動においては、グループの目標達成に対して適切な支援を行い、より高い成果を生み出せるよう導く責任があります。管理者は、従業員に与える影響力が強いので「支援」という形で参加することが最も重要です。
管理者は職場の目標を明確にして、これを小集団活動に反映させるようにしなければなりません。同時に、活動の進め方や各種手法の使い方、各人の能力向上について関心を持ち、適切な指導、支援を行うことが肝要です。
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「小集団活動の効果的な進め方」の第1回目として、小集団活動の歴史と概念について説明をしました。まず、小集団活動を推進していく際に、4つの基本要素(人、グループ力、改善力、管理者の支援)のレベルアップが重要であることをよく認識しなければなりません。そして、以下の項目は、その基礎的な施策ですので、こちらも十分に考慮していかなければなりません。
- 問題が発生したときだけではなく、グループの目標に向かって常に活動を続けていく。
- 管理監督者の協力により自主的に活動を進め、日常の管理項目や異常についての検討、改善活動などをグループ全員で進める。
- できるだけ週1回、少なくとも月1回のグループ検討会を行う。
- グループはリーダーを選出し、グループリーダーが中心となって、全員で問題を見つけて解決方法を考え(Plan)、試行し(Do)、評価し(Check)、標準化(Action)を促すなど、一歩一歩前進させていく。
- グループリーダーは、グループ内の互選で決定し、できるだけ輪番制にして、各人のリーダーシップ力を育成する。
- 管理図(関連記事:「安定した工程」を作るには? ゼロから学ぶ「管理図」の使い方)、パレート図(関連記事:品質管理者必須の統計的手法 層別、チェックシート、パレート図)、特性要因図(関連記事:品質管理に活用される主な統計的手法「特性要因図」)、ヒストグラム(関連記事:ヒストグラムの読み方、コツと経験則)といったQC手法の勉強をしながら実践することで、知識と活用技術を身に付ける。
- 他のグループと合同で会合や改善活動を進める。
- 社内外のグループ成果発表会やグループ行事に参加する。
ここには、小集団活動の推進に関する項目も含まれています。次回は、小集団活動の推進組織、より具体的な小集団活動の進め方などを中心に解説していきます。ご期待を!!
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筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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