QCサークルを超えた小集団活動の効果的な進め方(1):実践! IE:現場視点の品質管理(16)(2/3 ページ)
品質を作り上げるのは、直接仕事に携わっている1人1人です。つまり品質向上のためにはボトムアップからの作り込みが重要です。ボトムアップからの盛り上げに役立つのが「小集団活動」。さて、小集団活動を成功させる4つの基本要素とは何でしょうか。
小集団活動とはどのような活動なのか
(1)経営改善活動と小集団活動
経営の効率向上に役立つ全ての改善活動のことを“経営改善活動”と呼びます。つまり、経営改善活動は、大きく変化していく経営環境に対応して、主として、「Quality、Cost、Delivery」の観点から有効な戦略の迅速な実行を目的としています。さらに人と組織の活性化により業績の向上を図り、企業の限りなき発展と社会の繁栄に貢献することを目的とした活動をいいます。実施にあたっては、職制活動や委員会活動、タスクフォース活動(Task Force Project)、小集団活動などによって推進していきます。
以上の経営改善活動の全体像を図1に示しました。この中で、小集団活動は、経営改善活動を支える代表的な活動として位置付けられます。図1の左下に示した職制活動は、職位を軸とした活動ですから、当然のことながらトップダウン的で、結果重視です。それに対して、小集団活動は、従業員で構成する小集団を主体とした活動ですから、自主性を重視したボトムアップ活動となり、どちらかといえば結果よりもプロセス重視の性格を持った活動であるといえます。このように、小集団活動を経営改善活動の一環として推進していくために求められることが3つあります。
(a)職場の方針と密接な関係を持った全員参加の活動である。
(b)業務の効率向上や品質向上、明るい職場づくりなどの幅広いテーマを取り上げた活動である。
(c)間接部門も含めた、全部門が一体となった協働体制の活動である。
(2)小集団活動推進の要点
小集団活動は、経営改善活動を支える活動として、各種のQC手法などを活用し、職場の問題点を全員参加で自主的に改善・解決していくグループ活動です。その結果として、業績への寄与の他、職場の活性化や参加メンバーの能力の向上を達成しながら、会社の発展を通して社会の繁栄に貢献していくことを目的としているのは前項で記した通りです。
具体的には主として、現場における品質意識の高揚を図り、品質向上とコストダウンの効果を挙げていくために、第一線の従業員を主体としたグループを作り、自主的な活動を進めていくことです。次に小集団活動を進める際の要点について説明します。
(a)全員参加と創意工夫
小集団活動は、全員が共に考え、汗を流し、協力し合いながら、一致団結して1つの目標に向かっていくところに意義があります。各人の持っている能力を結集することによって、より高い目標への挑戦が可能となるのです。
(b)自主性
小集団活動の基本は自主性にあるといっても過言ではありません。グループ全員の積極的な協力が必要ですが、活動では、あくまでも自主性を重んじなければなりません。そして、活動は、永続的で発展的なものではなくてはなりません。自主性が生かされたときに1人1人の真の実力が発揮され、小集団活動のより大きな成果を達成することが可能となります。自主性とは、自ら積極的に問題を見つけ出して、改善を進めていくことです。自主性は、「マズローの欲求5段階説」*1)にある“自我・自尊の欲求”や“自己実現の欲求”を充足させる方策としても効果的です。自主的活動とはいえ、活動を進めるに当たっては、会社や職場の方針をよく理解して、建設的(積極的、発展的)に行動していくことも大切です。
*1) アブラハム・マズロー(Abraham Maslow)は、心の健康についての理論を研究した20世紀の米国の心理学者。マズローの欲求5段階説では、人間の基本的要求を低次から高次に向けて5段階に分類している。低次から順に、生理的要求、安全の要求、所属と愛の要求、自我・自尊の欲求、自己実現の要求である。
(c)問題点の解決
小集団活動は、問題を見つけて解析し、対策を立案して、それを実行し、そして、その改善の成果が定着するように持っていかなければなりません。そのためには、仕事に必要な知識はもとより、改善のための各種手法を十分に習得し、職場において実践しながら活用していくことが大切です。そして、さらにグループ間の交流を図って、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)していくことも重要です。
(d)品質意識の高揚
品質意識の高揚とは、メンバー1人1人が担当業務の重要性を認識し、品質は自分自身で造り込むものであることを自覚し、“魂”の入ったモノづくりを心掛け、常に製品の品質向上に努力することをいいます。
また、品質を造り込む人たち全てが、顧客の立場に立って十分に満足のいくような性能を保証し、併せて、業務やプロセスの改善などにより、たゆみなくコストダウンを進めていかなければなりません。
(e)能力や資質の向上
小集団活動では、1人1人の能力とグループの活動内容をレベルアップさせるために、各人が自発的に自己研さんに努め、自己の新しい能力を開発していくとともに、新しいものの見方や方法など、他の人の良い面を吸収するよう、お互いに心掛けていかなければなりません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ⇒「製造マネジメント」全記事一覧
- 品質管理に活用される主な統計的手法「特性要因図」
魚の骨は多ければ多いほどいい? 特性要因図の作り方から検証方法までを解説。使い倒して技能アップを目指そう! - 「安定した工程」を作るには? ゼロから学ぶ「管理図」の使い方
生産現場のカイゼン活動に必須の手法を紹介。今回はさまざまな用途に用いられる管理図の、それぞれの性質や使い方をじっくり見ていこう。