日産のEV用電池の年間生産能力が「リーフ」35万台分に、米国工場が稼働:電気自動車
日産自動車は、米国テネシー州のスマーナ工場に併設した車載リチウムイオン電池工場を稼働したと発表した。EV用電池モジュールの年間生産能力は「リーフ」20万台分である。日本のオートモーティブエナジーサプライ、英国サンダーランド工場と合計すると、EV用電池の年間生産能力はリーフ35万台分に達する。
ハイブリッド車(HEV)を2016年度末までに15車種投入する方針を発表した日産自動車(関連記事1)。これまで次世代エコカーとして電気自動車(EV)に注力する姿勢を鮮明にしていたが、同社の販売目標台数と比べてEVの売れ行きが不振なこともあり、軸足をHEVに移したのではないかという報道が相次いでいる。
しかし、日産自動車がEVに注力する方針はほとんどブレてない。HEVの車種拡大を発表した会見でも、Renaultと日産自動車のアライアンス(ルノー・日産アライアンス)で、2016年度までに累計150万台のEVを販売する方針を堅持した。EVの販売拡大のために、主要構成部品の製造コストを、2010年代後半に現在の半分にするという目標も明らかにしている。
全世界で「リーフ」35万台分の電池を生産
さらに、日産自動車は2012年12月12日(米国時間)、米国テネシー州のスマーナ工場に併設した車載リチウムイオン電池工場を稼働したと発表した。EV用電池モジュールの年間生産能力は「リーフ」の20万台分に達する。2013年初頭からスマーナ工場で生産する、北米市場向けリーフに搭載する計画だ。
同社の車載リチウムイオン電池工場は、子会社のオートモーティブエナジーサプライ(AESC)、英国サンダーランド工場に続き3拠点目となる。EV用電池モジュールの年間生産能力をリーフの台数に換算すると、AESCが9万台でサンダーランド工場が6万台。これに、今回のスマーナ工場の20万台が加わると、日産自動車は全世界でリーフ35万台分のEV用電池モジュールの年間生産能力を持つことになる。
このEV用電池モジュールを搭載するリーフは、現時点では追浜工場(神奈川県横須賀市)でのみ生産されている。年間生産能力は5万台である。2013年からは、スマーナ工場とサンダーランド工場での生産が始まる。年間生産能力は、スマーナ工場が15万台、サンダーランド工場が5万台。3拠点を合計すると、リーフの年間生産能力は25万台となる。
2016年までに累計150万台のEV販売は可能?
先述した通り、ルノー・日産アライアンスは、2016年度までに累計150万台のEVを販売する方針である。ここから、2012年11月までのリーフの累計販売台数約4万6000台(日本約2万500台、米国約1万8000台、欧州約7000台)を差し引くと、2013〜2016年の4年間で販売しなければならないEVの台数は145万台になる(現在までのルノーのEV販売台数を除く)。
現在「不振」とされるEVの売れ行きから、この目標達成を疑問視する声も多い。しかし、日産自動車は、今回の工場稼働により、2013〜2016年の4年間でリーフ140万台分の車載リチウムイオン電池を生産する能力を確保した。この数字は、先述した4年間で販売しなければならないEVの台数である145万台とほぼ同じである。
EVの主力となるリーフは、2013〜2016年の4年間で100万台の生産が可能だ。さらに、2012年11月に日本市場向けリーフをマイナーチェンジした(関連記事2)。2013年初頭からスマーナ工場で生産する北米市場向けリーフも、「多くの先進技術の追加と仕様変更がほどこされる予定」だという。
リーフの他、ルノー・日産アライアンスが販売しているEVとしては、ルノーの小型商用車「Kangoo Z.E.」、セダン「Fluence Z.E.」、2人乗りの超小型車「Twizy」がある。これらに加えて、日産自動車は、2014年に商用車「e-NV200」と高級車ブランド「インフィニティ」のEV、2016年にもう1車種を追加する予定。ルノーも、ZOEの販売を間もなく始める。
これら8車種でどこまで販売台数を伸ばせるのか。マイナーチェンジで性能を向上したリーフの2013年の売れ行きが試金石になるとみられる。
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