あなたは生産品質を管理できていますか? 5M管理の心構え:実践! IE:現場視点の品質管理(6)(3/3 ページ)
5Mを管理するってどういうこと? QCDの個々要素でも、全体を通しても、“良いモノづくり”を実現するにはどうしたらいいのでしょうか? 本稿で生産品質を管理するための基本を学びましょう。
データの取り方
なぜデータを取るのか?
現場では日々、図面通りに品物はできたか、どのような品質の出来上がりか、工程の能力はどれくらいか、不良は発生したであろうかなど、実にさまざまな問題や気掛かりなことが多いものです。このような問題を解決するためには、問題の対象の現状を正しく理解しておかなければなりません。実態がハッキリしないと、合理的な対策の立案ができないからです。
このような多くの問題を解決する手掛かりを得るために、毎日いろいろなデータを取っているにもかかわらず、残念ながらそれらのデータが改善に生かされていない状況を筆者は多く見掛けます。ここで、「なぜ、データを取るのか」を確認しておきたいと思います。現場でデータを取る目的は、次の2つに大きく分けることができます。
原材料、部品、製品に関する特性の測定結果より、アクションを行う 生産される原材料、部品、製品などの主要な特性を測定したデータを図面や規格に定められられた特性値と比較して良否を判断し、所定のアクションを行う。
生産工程の能力や実態を把握して、合理的な管理を行う 原材料の良否、機器や装置、治工具、作業者、環境条件などに起因するさまざまな要因が重なり合って生産工程が常に変動しているので、これらの工程で作られる部品や製品のデータを通じて、生産工程の状態を知り、的確なアクションを実施しながら、合理的な工程管理を継続する。
データを取るときの注意
現場などでデータを取る際には、次の点に注意して依頼する必要があります。
ムダなデータを取らないようにすること データを取るときは、どのような目的のためにデータを取るのかをハッキリさせて、ムダなデータを取らないようにしなければなりません。まず初めに、取ろうとしているデータを何に使うのか考えて、取るべきデータをよく検討します。次に、そのデータの取り方を決めます。例えば、日常の工程の管理のためのデータの取り方と不良の原因調査のためのデータの取り方はおのずと異なってくるはずです。
データの取り方をハッキリと決めること 取ったデータの結果によって何かの判断をするわけですから、他のデータと比較したりすることが多いものです。データの取り方が曖昧では、データを比較することも、適切な判断を下すこともできなくなります。従って、次のような点に注意しなければなりません。
- データを誰が取るかを決める
- データをいつ取るかを決める(いつ測るか、何個測るか、まとめて測るか、など)
- データをどこで取るかを決める(めっき前か後か、どの工程で取るかなど)
- データをどのようにして取るかを決める(測定方法、測定器具、測定位置、良否判定基準を明確にするなど)
データの数は少な過ぎてはいけない データは知りたいと考えている対象の本当の姿を代表するものですから、これがハッキリと分かりやすく表現されているようなものでないと役に立たないことが多いものです。従って、始めはできるだけ多くのデータを集めてみる必要があります。数さえ多く集めれば、必ずしも本当の姿を代表するわけではありませんが、始めから数個のデータで物事の判断を行うよりは、数多くのデータを利用して、いろいろな観察を行った方が比較的誤りが少ないものです。 例えば、ある幅の規格に対して寸法がどのような分布をしているかを知るような場合には、少なくとも25〜50個のデータが必要です。
データを時系列的に取る必要はないかを考えること 数多くのデータを集めれば、多くの性質が分ることが多いものですが、費用と手間をかけてデータを取るなら、少しでも情報が多く得られる方法を考えなくてはなりません。製造工程の管理や改善を行う場合、製造の過程における工程の変化に応じて適切なアクションを行わなければなりません。そのためには、時間の経過に伴う工程の変化(これを時系列的な変化という)を見極めることが貴重な情報となることが多くあります。時系列的な見方をする必要があれば、一定間隔でデータを取らなければなりません。
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次回は、現場管理者が、品質管理を行う場合の必要な手法について説明します。いわゆる図示化の技術のことですが、その中でも「QC七つ道具」は代表的な手法です。次回の説明は、この「QC七つ道具」の解説が中心となります。
最近の若い現場の人たちや技術屋さんたちの話から感じることは、データを取る目的が事前にシッカリ検討されていてないために、データが不足しているとか、取ったデータによって、事実に基づいて何かを判断するというよりも、結論ありきで、それを裏付けるためにデータを取っているという本末転倒ともいうべき事態が多く見受けられます。また、図示化にい至っては、表やグラフで現すことが精いっぱいで、データ解析を目的とした「QC七つ道具」の活用とは程遠いというのが実情ではないでしょうか。「QC七つ道具」の中の1つずつの手法については誰もが正しく説明しますが、どのように活用していくかとなると心もとない説明が多く聞かれます。「QC七つ道具」の活用に代表される科学的思考の欠如は、“管理”以前の問題です。
次回から数回に分けて、手法の説明を超えて、実際にどのように活用し、日ごろの品質管理活動や改善活動に役立たせればよいかを解説したいと思います。
ご期待ください!
⇒前回(第5回)はこちら
⇒次回(第7回)はこちら
⇒連載「実践! IE:現場視点の品質管理」バックナンバー
⇒製造マネジメントフォーラム過去連載一覧
筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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