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製造現場の品質管理 “5M”カイゼンの心構え〔後編〕実践! IE:現場視点の品質管理(5)(1/2 ページ)

製造過程の品質を左右する5つの要素“5M”。バラツキを抑え、滞りなく高品質の製品を納期順守で製造するために必須の要件とは?

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⇒連載「実践! IE:現場視点の品質管理」バックナンバー

 前回の記事では、生産の品質水準を左右する5Mの概要と、5Mの1要素である「人(men)」の品質を高めるための心構えを紹介しました。

 今回は、5Mの残り4つの要素について、それぞれの問題となりやすいポイントや改善に向けた心構えを解説します。

2.2 方法(Method)

 例えば、製品の組み立てを行う場合、各人が好き勝手にやれば数多くの手順が出てきます。

 そうすると、多くのバラツキを持ったものが生まれ、不良も数多く発生してしまうことが容易に想像できます。

 このような事態を防止するために、作業の一番良い方法に統一して、皆でそれを守ってバラツキをできるだけ小さくしようとします。考えられる一番良い(最良かつ経済的)方法に決めて統一していくことが「標準化」です。

 これにより、全員が安くて早い作業のやり方を覚えることができ、その結果、製品のできばえを均一にできるようになります。

 標準化は、現場における製造の作業方法のみでなく、治工具の設計方法、休暇届けの方法、出庫伝票による出庫の仕方など、あらゆる業務が対象です。

 結果を成文化し、工場の事務規格、設計規格などの各種規格や作業指導書、あるいは工程表などに規定しておきます。

 標準化のルールは、文書化され、仕事を担当する全ての人が理解し、守られるべきです。当然、管理者は部下に標準を正しく指導しなくてはなりません。部下が正しい仕事を行って良い製品を作り出すことが品質向上の第一条件であることをよく理解して実行することが大切です。

 標準は、現在考えられる一番良い方法を決めた“同意書”です。技術の進歩とともに、さらに進んだものに随時書き換えて行く必要があります。品質管理の根本は技術の向上です。常に新しい技術を取り入れて標準が改訂されていかなければ品質水準は進歩しないといってよいでしょう。

2.3 機械(Machines)

 5Mの1つで、「Machines(機械)」とは、単なる機械設備のみではなく、あらゆる設備、治工具を含みます。ここではこれを「道具」と表現することにします。そこで、工場の「道具」をあらためて区分してみると次のようになります。

  • 大道具:施設、建物、動力設備関係
  • 中道具:機械設備関係
  • 小道具:治工具類

 どの道具が欠けても製品を作ることができません。これらの道具の在り方が製造現場を支えています。

(1)施設、建物、動力設備(大道具) 工場の大道具は、設備、建物、動力設備と熱、電気、ガスなどのエネルギー源に相当します。これらの管理業務は、一般に専任スタッフの職務になりますので、本稿では割愛します。

(2)機械設備(中道具) 原材料に何らかの加工を加えて、製品を作り出すことを特徴とする機械設備、組立工場では、原材料に、より高い価値を付け加えるための機械設備が必要です。機械設備は、次の3つに分類されます。

  • (a)直接製造に使われるもの
  • (b)前工程で使われるもの:材料の受入検査、保管、運搬等の工程で使われる
  • (c)後工程で使われるもの:製品の試験、検査、運搬、保管等の工程で使われる

 これらのうち、(b)、(c)の製造の前工程と後工程に使われるものは、製造工程が円滑に進むように、原材料の適切な準備、確実な保管、迅速な運搬・供給を行うために必要な設備です。(a)の直接製造工程で使用される設備と、互いに密接な連繋を保って、バランス良く効率的な生産活動を果たしていかなければなりません。

(3)治工具類(小道具) 治工具をどの程度のものにするかは、その治工具を使って生産する製品の性質や生産量、生産工程などによって決まるものですが、要は原価を安く、均一の品質を保証するために治工具を使用します。治工具を活用する上での留意点は次の通りです。

  • (a)治工具は、製品の製造途中で作り替えが必要だったり、逆に必要な作業が終了しても数年は十分にもつような過剰品質のものを作らないように注意します
  • (b)製造工程を検討し、その治工具を使用することで工数の低減や作業の急速な習熟が期待できるように計画します
  • (c)生産中の治工具の精度管理は重要です。常に治工具の精度が確保されていなければ目的を果すことができません
  • (d)治工具化の計画は、工数低減や加工精度の向上など、それぞれの工程に適した指標で判断しなければなりません。また、特定の工程だけが治工具化されて精度が上がっても、他工程の精度が低くては無意味なものになってしまいますので、全般的なバランスを考えて治工具化を進めることが大切です

(4)道具の管理 道具は大小さまざまです。これらの道具が品質に及ぼす影響は製造工程によって異なりますが、“道具”が常に能力を発揮し、維持していけるように、使用状態を管理する必要があります。「道具」の品質管理には、次の3つの段階があります。

  • (a)(品質を正しく作り出すために)道具を正しく使用する:製造部門
  • (b)(道具をいつも問題なく使用するために)必要な保全を行う:設備保全部門
  • (c)(適切な設備を提供するために)設計、選択、準備、維持、修理更新を行う:生技部門

 「道具」は、大きなものほど、関連業務が多くの部門にまたがるようになります。業務の複雑さからくる混乱を避けるためにも分業化は賢明です。

 ただし、分業化はコミュニケーションの悪さなどにより、総合的な計画と管理が実施されにくくなってしまう恐れがあります。

 これを防ぐために、管理を一元化できる体制を整えることが望まれます。一元管理体制の中心は現場の管理者であり、管理者として自己の職場の品質を守るという十分な自覚と実行が何よりも大切です。


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