製造現場の品質管理 “5M”カイゼンの心構え〔後編〕:実践! IE:現場視点の品質管理(5)(2/2 ページ)
製造過程の品質を左右する5つの要素“5M”。バラツキを抑え、滞りなく高品質の製品を納期順守で製造するために必須の要件とは?
2.4 材料(Materials)
一般に、材料(Materials)とは、原料、材料を指して呼ぶのが普通ですが、ここではもっと広い意味に解釈します。例えば、ある組み立て工場において使用される部品として、L形金具、ねじ、ワッシャーが必要な場合には、この工程で必要とするものを指して材料と考えます。原料や素材はもちろんこと、部品やサブ組み立て品も「材料」といいます。
(1)同じものとは? 仕事の中では、統計的に見て実用上差し支えのないもの同士は、同じものという表現を使っています。
例えば、製品Aの特性を測定し、この値を度数分布で図示して、統計的に比較するとよく分かります。このような方法で、AとBは同じであると判断しています。
(2)安易な思い込みの品質判定は禁物? 安易な品質判定として、次の事例があります。
あるメーカーの材料(ロット番号は同じシート材)2枚を倉庫から出庫し、自動プレスにセットして外形抜きを行いました。この時点では、外観的にも寸法的にも合格品でした。しかし、この合格品を次の曲げ工程へ送り、作業後に全数チェックをしたところ、50%のものが曲げ寸法不良になってしまいました。もちろん、曲げ工程の作業方法や作業者、型は同じでした。
この問題の原因には何が想定されるでしょうか。結論からいうと、ロット番号が同じだったために、材料特性が同じであるという思い込みの判断で、十分なチェックが行われないまま購入したためでした。直接の原因としては、2枚の材料のうち、1枚が購入仕様を満足していなかったことが原因でした。
つまり、このケースでは受入検査時点で発見していれば、このような不良は未然防止できたわけです。単にロット番号が同じだからという理由でこれらの品物を同一のものと考えるのは正しくないことが分かります。データを正しく採取して比較することが必要であったということです。この例は受入検査の問題ですが、材料ではこの種の事例は日常的に発生することです。下記の項目を十分に考慮して注意しなければなりません。
- (a)材料は、質・量ともに間違いはないか。成績書が付いていれば、内容のチェックをするか、過去に不良の出た材料などは現場でも注意しておく必要がある
- (b)作業中に異質の材料の混入を発見したときの処置方法はルール化されているか。また色別、棚位置別、来歴管理して使うなど、層別して作業を進める配慮がされているか
- (c)材料の取り扱いに不具合な点はないか
- (d)材料の整理・整頓(せいとん)は、よく行われているか確認する
- (e)材料を浪費していないか確認する
- (f)材料の手配や調達は正しく行われているか確認する
- (g)材料のロット間の相違による問題はないか常に注意する
2.5 計測(Measurement)
製造工程の品質管理の最も重要なポイントは、作業の諸条件を正しく決めて維持していくことです。出来上がった製品だけを測定しても、結果を確認することにしかなりません。より良い製品を作り出す条件をいかに最適に決めて、それをどのように維持していくかが重要です。ただし、条件管理をするだけで良い製品が作れるというわけではなく、条件が正しく守られていて、十分に保証できるかどうかは、最終的には測って確認する必要があります。
品質保証の面から見ると、製品の出来栄えの品質をチェックして保証するもの、作ってから製品を破壊して試験をないと分らないものとの2つがあります。
前者は寸法、重量のように外側から簡単に測れるものですが、後者は一般に特殊工程といわれる溶接や熱処理のような作業の品質(溶接強度など)を確認することを指しています。
後者の場合は、作業の条件を正しく設定し、その条件の変動(温度、圧力、電圧、電流、時間など)をきめ細かく管理しておくこと(条件管理)が大切です。さらに、この場合は特に、自分の行った仕事に、自分で責任を持つという真摯な作業の遂行がなによりも大切です。
いままで述べたように、条件管理と出来栄えの品質測定のいずれも重要です。
計測機器の側面からは、生産工程の条件管理を行うために生産工程の一部に組み込まれたもの(計装機器)と、試験、検査、測定、研究などで、機器単体で使用する出来栄えの品質を測るもの(計測機器)の2つに分けられます。
計装機器で条件を管理することで、工程の管理を定量的に測定し、適正な作業条件の管理や作業の遂行ができるようになります。
また、計測機器、計装機器のいずれも初期の精度が維持されていなければ大きな誤りを起こすことになりますので精度の定期的な保守・管理が重要です。計測管理担当部門を設け、専任職制として計測機に関する管理全般を統制して、計測器の選定活用を有効に行う必要があります。
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製造品質の水準やバラツキは、5Mの管理水準や管理の厳格さに影響を受けているといっても過言ではありません。つまり、製造過程で品質に影響を及ぼす要因は、5Mに要約できるということです。
現場で品質管理を行う際の5Mの管理はとても重要ですから、本稿ではその内容を詳しく説明しました。現場視点の品質管理の本質と実行事項がご理解いただけたと思います。
前回・今回の記事では、あえて言えば品質管理の“品質”について説明しましたが、次回は、品質管理の“管理”の部分について説明していきたいと思います。
ご期待ください!
⇒前回(第4回)はこちら
⇒次回(第6回)はこちら
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筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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