プラントの平均稼働率90%以上を目指す、出光興産のAIエージェント活用術:人工知能ニュース(2/4 ページ)
製造業が直面するデータのサイロ化や属人化。この課題に出光興産はどう立ち向かっているのか。同社はプラント稼働率90%以上という高い目標を掲げ、各業務に特化した「AIエージェント」の実装を進めている。今回は、データの統合から現場へのAIエージェント活用の定着、AIエージェントを統率する「AI Orchestrator」の展望などを紹介する。
CDFでデータ活用を効率化
出光興産の製造技術部門では、全社のDXとAIの戦略を受けて、2024年まではプラントの操業で利用しているさまざまなシステムからデータを取得した。現在は、コグナイトの産業用データ統合/管理プラットフォーム「Cognite Data Fusion(CDF)」により、これらのデータを集積している。
CDFを導入した背景として鳳城氏は「当社のプラント運営では以前、過去の仕様書や報告書、最新の機器図面、過去の検査データ、P&ID(配管計装図)や気付きメモ、関連技術基準、過去のトラブル事例、運転データが分断された状態でさまざまなシステムに保存されており、各データが分断化された状態だった。現場のスタッフは、必要な情報を得るために、手作業で複数のソフトウェアを立ち上げ、自らデータを『集める』必要があった。そのため、各システムの『操作方法を教えなければならない』『時間がかかる』『引き継ぎが難しい』といった多くの課題を抱えていた。時間はコストに直結するため、この非効率な状態からの脱却が急務だった」と振り返る。
そこで同社は、プラントの運営で必要なデータを一元管理するためのプラットフォームとしてCDFを導入した。これにより、点在していた各データをひも付けるとともに、CDFにアクセスすれば必要な情報を迅速に取り出せる仕組みを構築した。
しかし、導入は容易ではなかったという。「各プラントの業務フローは、似ているようで全く異なっていたり、データの形式が違っていたりしたため、現場との調整が非常に難しかった」と鳳城氏は述べた。
現在、同社ではCDFと、P&ID、スプール図、電気系統図と3Dモデルの一部、設備管理システム、ヒヤリ事例、引き継ぎ簿、運転データ、設備保全管理システム(CMMS)、技術情報、設備図書のデータを連携している。
これらの中でも引き継ぎデータは、24時間稼働のプラントでは12時間ごとのシフト交代時に交わされる情報で、個人の経験や属人的な気付きが含まれるため重要だ。現状、電気系統図と3Dモデルの一部でCDFとデータ連携が未完了ではあるものの、全体のひも付け率は対象データの85%に達している。
CDFの導入は現場にポジティブな変化をもたらしているという。鳳城氏は「現在の累積ユーザー数は約2500人で、対象者の6〜7割が既にシステムを利用している。1日の平均利用者は320人だ。定量的な効果としては、情報探索時間の短縮などにより、年間約12万時間相当の業務効率化を実現しており、今後の普及に伴いさらなる効果の拡大が見込まれている」と明かした。
同講演では、同社の現場で実際に利用されているCDFの画面を用いてユースケースが紹介された。
CDFのダッシュボード画面では、P&ID、静機械、動機械、電気、計装、配管設備図書、技術文書がタブで表示されており、これらのデータはプラント内の機器ごとにひも付いている。例えば、「常圧蒸留装置の熱交換器(C-E-150)」といった特定の機器を選択すると、その機器に関連する設備図書、過去のトレンドグラフ(チャート)、点検履歴などが一画面で参照できるようになっている。これにより、トラブル発生時の状況把握が速くなったという。
また、従来はプラントで朝方に不具合が発見された場合、運転データや機器の情報を収集し、PowerPointやExcelにまとめてから関係者に共有していた。この情報共有に時間がかかり、プラントは安全のために稼働をスローダウンする場合もあり、稼働率低下の一原因となっていたという。
こうした問題の解決策として、Cogniteのデジタルワークスペース「Industrial Canvas(インダストリアルキャンバス)」を活用している。Industrial Canvasは、CDFから抽出した現場の写真や報告事項を1つの画面上にまとめられ、関係者全員が同じ状況を把握できる。さらに、AI要約機能によりこれらの文書を要約し、理解を促進しているという。
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