AIエージェントで現場を“本当に”助ける産業用データ活用へ Cogniteが機能追加:製造ITニュース
Cogniteは、ローコード型産業AIエージェントワークベンチである「Cognite Atlas AI」をリリースし、産業用データの活用による価値創出を加速する。
Cogniteは2025年9月10日、ユーザーイベント「Cognite Atlas AI Summit」において、日本での同社の取り組みを紹介するとともに、ローコード型産業AIエージェントワークベンチである「Cognite Atlas AI」のリリースを発表した。産業用データのアプリケーションとしてAIエージェントを簡単に構成できるようにし、製造業で現場データの活用による価値創出を加速する。
日本ではアクティブユーザー数は2年半で30倍に成長
Cogniteは「データとAIが推進する産業世界で、人間の創造性を解き放ち、より安全で、より効率的で、より持続可能な産業の未来を形作る」をビジョンとし、複雑な産業用データを現場の負担を抑えた形で容易に活用できるようにする産業用データプラットフォームを展開している。
同社のデータプラットフォーム「Cognite Data Fusion」は、工場やプラントに散在している時系列データや3Dデータ、非構造化データなど、さまざまな形式のデータを集め、AI(人工知能)を活用したデータのコンテキスト化で産業ナレッジグラフを生成する。この整理されたデータを活用し、産業用アプリを展開したり、これらを組み合わせた専用産業エージェントを展開したりする。
Cognite CEOのGirish Rishi(ギリッシュ・リシ)氏は「Cogniteの製品の特徴は、複雑な産業用データにシンプルにアクセスできる点だ。最初からそういうことを想定してアーキテクチャを構築している」と語る。
また、Cognite日本法人 代表取締役社長の江川亮一氏は製造業がDXでうまくいかない点がこの産業用データへのアクセスの難しさだと指摘する。「DXで重要なのは現場のデータをいかにビジネスに生かすかという点だが、データの扱いが大変すぎて現場の負担が大きくなり進まないパターンが多い。このデータに関する負荷を下げ、現場で働く人に価値を早く提供するということがカギだ。Cogniteはこの点でデータに関する負荷を低減し、現場の『こんな情報が欲しい』という要望にすぐに応えられる仕組みを用意している」(江川氏)。
実際にこれらの点が評価を受け、エネルギー産業、化学産業、金属産業などで採用が拡大している。過去2年半でアクティブユーザー数はグローバルで8倍、日本では30倍に成長したという。江川氏は「日本では30〜40社が導入している。日本でも最初はエネルギー産業や化学産業などプロセス製造業から採用が進んだが、今後はディスクリート型の自動車や電子部品産業への提案を広げていく」と語っている。
AIエージェントを簡単に構築できるCognite Atlas AI
これらをさらに加速させるため新たにAIエージェント構築のオプション機能であるCognite Atlas AIをリリースした。Cognite Atlas AIは、Cognite Data Fusionで収集された産業用データや、それを活用するために構築されたアプリケーションやワークフローなどを活用し、これらを自動化するAIエージェントを簡単に構築できるようにするものだ。
Cognite Atlas AIは、Cognite Appsへのシームレスな統合が可能である他、事前設定されたテンプレートによる、効率的なAIエージェント作成ができる。きめ細かなユーザーアクセス制御による、安全で統制された運用なども可能としている。事前に用意されたAIエージェントのテンプレートとしては、データ探索やダウンタイムの要因分析、メンテナンスの自動化などがあるという。「基本的にはデータ基盤を通じて顧客がアプリケーションを構築しているので、それに応じて独自のAIエージェントを作るような使い方も想定している。仮想ワーカーとしてある作業をそのまま担わせるようなことが可能だ」とリシ氏は述べる。
Cognite Atlas AIはCognite Data Fusionのオプション機能であるため、Cognite Data Fusionを導入していなければ、AIエージェント機能を使うことはできない。まずCognite Data Fusionで、データを取得するアセットとセンサーの数(Cognite Tag)の合計値によって基本価格が決まり、そこにCognite Atlas AIのオプション分が上乗せされることになる。Cognite Atlas AIについての3つの価格体系があり、AIエージェントが3つまでのコースと、無制限のコース、顧客ごとにカスタムで作成するコースを用意している。
江川氏は「データからビジネス価値を生み出す活用手法の1つとしてAIは大きなカギを握る。日本でもAI活用に向けたトライは80%が行っているとされるが、定着しているのは20%にとどまるという調査結果もある。しっかりビジネス価値につなげられる点を訴えていく」と考えを述べている。
今後は、これらのAIエージェント機能もうまく訴求しながら日本での導入を「2026年までに2倍以上に増やす」(江川氏)考えだ。リシ氏は「日本市場は現在Cogniteにおいて約2割の売り上げ規模だがそれ以上に大きなインパクトを持つと考えている。クイックスタートという機能は日本の顧客の要望に応えて開発し、それをグローバルに展開したものだ」と日本市場の重要性について語る。
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