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スマート工場で成果が出せない現場で見過ごされがちな「データ活用の前準備」いまさら聞けないスマートファクトリー(4)(1/3 ページ)

成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。今回から製造現場でつまずくポイントとその対策について。第4回では、製造現場データを活用する前に障壁となるデータの整理や準備の難しさについて解説します。

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 スマートファクトリー化は製造業にとって大きな関心事項であるにもかかわらず、なかなか成果が出ないという課題を抱えています。本連載では、スマートファクトリーでなかなか成果が出ないために活動を縮小する動きに危機感を持ち、より多くの製造業が成果を得られるように、考え方を整理し分かりやすく紹介します。

 第1回から第3回までは、スマートファクトリー化は広範な領域を含むためにそれぞれの部門や立場で求めるものが異なるということを説明してきました。それそれで期待値や成果の定義が変わり、部門間で利害がぶつかり合うために、「スマートファクトリー化で成果が出ない」という状況が生まれてしまうということを解説しました。

 さて、今回からはスマートファクトリーのまさに本丸である、製造現場の中での話に入りたいと思います。製造現場の中で生まれる“ボタンの掛け違い”について解きほぐしていくつもりです。第4回の今回は、製造現場データを活用する前に障壁となるデータの整理や準備の難しさについて解説します。

本連載の趣旨

 本連載は「いまさら聞けないスマートファクトリー」とし、スマートファクトリーで成果がなかなか出ない要因を解き明かし、少しでも多くの製造業がスマートファクトリー化で成果が出せるように、考え方や情報を整理してお伝えする場としたいと考えています。単純に解説するだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介します。

架空企業の背景

 従業員300人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「第4次産業革命を進める」と指示され途方に暮れます。そこで、第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺い、さまざまな課題をクリアしていきます。


本連載の登場人物

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矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)

自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、どっぷりのめり込む。最近閉塞感にさいなまれている。


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印出 鳥代(いんだす とりよ)

ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。インダストリー4.0などを中心に製造業のデジタル化についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。

前回のあらすじ

 さて、前回のおさらいです。本連載の第1〜3回は、スマートファクトリーがうまくいかない理由として、企業内のそれぞれの立場でそれぞれの描く「スマートファクトリー」があり、それが一致していないことにあるということを繰り返し説明してきました。第3回では、その中でエンジニアリングチェーンの連携の観点から、スマートファクトリーにおける設計と製造の溝について説明してきました。

 製造業において「設計と製造の壁」は長い間指摘され続けてきましたが、特に解決が進まなかった領域だといえます。

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製品設計や工程設計などを生産技術と組み合わせて考えていくというのは理解できますが、製造現場は改善活動などで、日々変わっていくものです。今までも協力はしてきましたが、現場では設計が関わる部分以外のことも多く、一体化といわれてもあまり納得感がありません。


 矢面さんも、設計と製造の一体化についてあまり納得できていない様子でしたね。しかし、ニーズの多様化などに対応する「マスカスタマイゼーション」などの新たなモノづくりを実現するには、従来の縦割りの枠組みを一度見直し、デジタル技術などをベースに新たな枠組みを考えていく必要があります。そういう意味では設計と製造をデジタルデータで結ぶプラットフォームのような役割が重要になってきます。また、逆にフィジカルデータをこうしたデジタル基盤に取り込むこともIoT(モノのインターネット)技術の進展などで可能となり、フィジカル世界の一部をデジタル世界で再現する「デジタルツイン」なども可能となります。

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スマートファクトリー化が進んで、製造現場の工程情報や機械や設備の情報が採れるようになったとしたらどうかしら。「デジタルツイン」などの概念も紹介されているけれど、製造現場のリアルタイムの変化が設計側で見られるようになれば、これらのフィードバックを生かしながら、柔軟な対応が行えるようになるし、現在あるような設計変更の負荷を低減していくこともできるわ。


 また、これらの「エンジニアリングチェーンのデジタル化」が進むことで、デジタル技術を生かした新たな製造技術を有効活用することも可能になります。例えば、3Dプリンタのようなデジタルファブリケーション機器やツールが今後、より高度化し、最終製品製造のさまざまな領域で使われるようになると考えた場合、製造や設計を分けて考えることがそれほど意味を成さなくなる可能性もあります。こうした新しいモノづくりの枠組みを受け入れるという意味でも、エンジニアリングチェーンの密な連携は従来以上に必要になってきているということでした。


 さて、今回から数回はこれらの各組織としての取り組みではなく、工場内でのスマート化を進める中で多くの企業がつまずくポイントについて紹介するつもりです。今回はその中で、製造現場データを活用する前に障壁となる「データの整理や準備」の難しさについて解説します。

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