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プラントの平均稼働率90%以上を目指す、出光興産のAIエージェント活用術:人工知能ニュース(3/4 ページ)

製造業が直面するデータのサイロ化や属人化。この課題に出光興産はどう立ち向かっているのか。同社はプラント稼働率90%以上という高い目標を掲げ、各業務に特化した「AIエージェント」の実装を進めている。今回は、データの統合から現場へのAIエージェント活用の定着、AIエージェントを統率する「AI Orchestrator」の展望などを紹介する。

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AIを現場に落とし込むのは大変な作業

 現在、出光興産は2030年に向けてAIエージェントによるプラントの異常検知と判断支援の実現を目指し、さまざまな取り組みを実施している。

 「AIを現場に落とし込むのは、多くの企業が苦労している通り、当社にとっても大変な作業となっている」と鳳城氏は述懐し、最新のAIエージェントを導入したからといって、現場ですぐに使用されないことに触れた。

 そこで、同社はAIの実装に向けて「場づくり」に取り組んだ。具体的には、「実際に役立つものしか現場では使われない」という問題認識を踏まえて、「Touch & Feel(デモで体感)」「データガバナンス(データ品質の重要性とAIの精度/特性が完璧ではない点)」「各分野(運転や保全など)におけるユースケースのアイデア出し」に向けた取り組みを行った。

製造現場でのAI実装に向けた“場”づくり
製造現場でのAI実装に向けた“場”づくり[クリックで拡大] 出所:出光興産

 「すでに高度な制御システムが稼働しているプラントにおいて、AIを追加することでどれだけのメリットがあるのかは、PowerPointのプレゼンだけで現場の従業員は納得しない。そのため、デモを通じて現場にAIの価値を体感(腹落ち)してもらうプロセスを重視している。同時に、『AIは完璧ではない(ハルシネーションのリスクなどがある)』という特性もしっかりと周知し、期待値のコントロールを行っている」(鳳城氏)

 加えて、当初は全社で共通のAIモデルの利用も検討されたが、運転、品質、生産管理、安全、保全など、プラントの業務は多岐にわたり、現場ごとに「固有の専門用語」「判断基準」「アクセスするデータベース」が全く違い、適用できないと判断した。

 こうした状況を踏まえて、同社はローコード型の産業AIエージェント開発ワークベンチ「Cognite Atlas AI」を活用し、各分野に適したAIエージェントを開発した。現在は、各分野でこれらのAIエージェントのユースケースを創出している。

 同講演では、運転、品質、生産、安全の管理におけるAIエージェントのユースケースが紹介された。

「Atlas AI」による意思決定の基盤づくり
「Atlas AI」による意思決定の基盤づくり[クリックで拡大] 出所:出光興産

「要領書」「ヒヤリハット」「過去事例」の検索を容易に

 同社ではプラントの運転を行う現場で、「要領書」「ヒヤリハット」「過去事例」を保存している。従来は、これらの資料から特定のデータを見つける際に、該当箇所を探し出すのに時間がかかっていた。

 こうした問題の解決策として、要領書や事例などの検索を効率化できる運転分野向けのAIエージェントを開発した。このAIエージェントにプロンプトとして「エチレン装置のトラブルシューティングを出して」と入力すると、関連するP&ID、要領書、ヒヤリハット、過去事例などが一覧で表示される。

 さらに、要約ボタンを押すと、AIエージェントがこれらの回答内容を読み込み、「目的」「前提条件」「具体的な手順」「安全上の注意事項」を簡潔に要約して提示する。これにより、検索業務効率化だけでなく、安全意識向上によるヒューマンエラー防止が期待できる。

重要なのは根拠の明示

 ガソリンなどの品質管理で役立つAIエージェントも用意している。このAIエージェントにプロンプトとして「レギュラーガソリンの規格を教えてください」と入力すると、保存されているデータベースから最新のガソリン規格の数値を引き出し回答する。

 また、生産管理では、原油の投入量に対する製品の生産量(得率)の予測や実績管理が重要なため、生産の計画や実績を可視化できるAIエージェントも開発された。このAIエージェントにプロンプトとして「今週のケロシン(KERO)の得率を知りたい」と入力すると、「今週のケロシンの得率実績は約〇〇%」と表示される。

 鳳城氏は「AIエージェントで生成されるデータのブラックボックス化の排除が重要だ。AIがどのデータを参照し、どのような計算式を用いてその数値を弾き出したのかが分からないと、現場は怖くて使えない。そのため当社のAIエージェントは、数値を導き出した根拠(計算式と参照データ)を必ず明示する仕組みを実装している」と強調した。

AIエージェントが属人性を排除

 安全の分野では、「データのクレンジング」と「属人性の排除」にAIエージェントが活用されているという。現場の従業員が作成する安全報告書やヒヤリハット報告などは、書き手によって表現や粒度が異なり、個人差が大きいという課題があった。そこで同社は安全分野向けのAIエージェントを開発した。

 安全分野向けのAIエージェントは、現場の従業員が作成した安全報告書やヒヤリハット報告などのテキストデータを読み込み、自動で分類や整理(データクレンジング)を行う。これにより、ヒューマンエラーが防止される他、事故件数や休業災害などの重要業績評価指標(KPI)の自動集計が可能になった。

 さらに現在は、トラブルの根本原因が「仕組み」「人」「設備」のどこに起因するのかをAIエージェントが自動で判定し、分類するAIエージェントの開発も進められているという。

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