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「ウエハーを切る」だけではない、ダイシング工程の知られざる世界:いまさら聞けない 半導体後工程(3)(3/3 ページ)

本連載では、半導体の高性能化において重要性が増す後工程を中心に解説する。前回は、ウエハーからチップを切り出すダイシング工程の役割と、その基本的な流れを紹介した。今回は、代表的なダイシング方法の特徴や使い分けを紹介する。

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プラズマでも「加工の安定」が品質を決める

 プラズマダイシングでも、エッチング速度だけを高めればよいわけではありません。ウエハー全面を均一に加工できるか、温度を適切に管理できるか、異なる材料が存在する場合にどう処理するかなど、量産では多くの条件を考える必要があります。

 量産装置の一例として、パナソニック コネクトの「APX300-PD」では、高密度プラズマの分布制御による加工均一性や、ウエハー温度を装置内で測定する機能などが採用されています。

 これは、プラズマダイシングも単に「非接触だから高品質」ではないことを示しています。エッチングの深さ、側壁の状態、ウエハー内の加工均一性、温度、マスクとの組み合わせなどを管理して初めて、安定した量産につながります。ブレードにブレード特有の管理項目があるように、プラズマにも固有の工程管理が必要なのです。

4つの方式をどう使い分けるのか

 では、4つの方式の中からどれを選ぶのが適切なのでしょうか。

 まず確認したいのは、ウエハーの材料と厚さです。次にチップ寸法、切断ラインの幅、表面の膜や配線、許容できる欠けや熱影響、生産数量などを整理します。例えば、これまでブレードで安定して量産できている製品なら、まずブレードや加工条件を最適化することが現実的な選択になります。

 一方、チップを小さくし、ウエハーからの取り数を増やしたい場合には、切断ラインを狭くすることが重要になります。そこでレーザー、ステルス、プラズマなどが候補になります。

 ただし、切断幅だけで方式を決めることはできません。

 レーザーなら熱影響や再付着物、ステルスなら内部改質と分割後の強度、プラズマならマスク形成やエッチング条件など、それぞれ異なる確認項目があります。

4つのダイシング方式の特徴比較
4つのダイシング方式の特徴比較[クリックで拡大]

ダイシング品質は「切った後」で決まる

 ダイシング工程で忘れてはいけないことがあります。

 目的は、ウエハーをきれいに切ることそのものではありません。前工程で作り込んだ回路を傷めず、次の組み立て工程で問題なく使えるチップとして送り出すことです。そのため、加工直後の外観だけで判断するのは十分ではありません。

 チップをピックアップするときに割れないか、ダイボンディングやその後の実装工程で問題が起きないか。必要であればチップ強度や製品としての信頼性まで確認します。

 加工幅が最も細い方式や、加工速度が最も速い方式が、その製品にとって最適とは限りません。

 ブレード、レーザー、ステルス、プラズマには、それぞれ異なる長所と管理すべきポイントがあります。材料と製品に合った方式を選び、加工条件を管理し、加工後の品質を確認する。そして量産中も、その状態を維持する――ダイシング品質とは、1つの優れた加工技術だけで作られるものではありません。加工方法の選択から条件管理、検査、そして後工程での確認まで。その積み重ねによって、1つ1つの小さな半導体チップの品質が支えられているのです。


 次回は、切り分けられた小さなチップを基板やリードフレームなどの所定の位置へ固定する「ダイボンディング」を取り上げます。小さなチップを正確に扱い、確実に接合するために、どのような技術が使われているのかを見ていきます。

著者プロフィール

森内眞

アルテム・イノベーション技術士事務所 代表

大学在学中に渡米し、MEMS開発に携わった叔父の下で4年間研究開発を経験。帰国後は、工作機械メーカーで横型マシニングセンタの開発設計や生産技術を担当した。1989年に独立してFA自動化設備のエンジニアリングセットメーカーを設立し、自動化技術や生産システムの知識を生かしてQCDマネジメントも行った。また、中国企業に招聘され、工作機械やコンベヤーチェーンなどの製造企業で自動化や工場改善、技術者教育などを指導した。2016年に技術士事務所を開設し、現在は国内外の製造企業で技術コンサルタントとして活動している。


⇒連載「いまさら聞けない 半導体後工程」のバックナンバーはこちら

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