「ダイシング」を知らずに後工程は語れない〜ウエハーがチップへ変わる出発点〜:いまさら聞けない 半導体後工程(2)(1/3 ページ)
本連載では、半導体の高性能化において重要性が増す後工程を中心に解説する。前回は、半導体製造工程全体のイメージをつかむため、「前工程」を紹介した。今回は、後工程の入り口となる「ダイシング」について紹介する。
この記事の3行ガイダンス
- この連載のテーマは何?
- 半導体製造工程を「後工程」中心に分かりやすく解説
- 今回取り上げる「ダイシング」って何?
- ウエハーをDice(細かく切る)する工程。ウエハーがチップになる出発点
- ダイシング工程って結局何?[↓クリックで表示]
- 後工程の品質を決める入り口。さまざまな超精密作業を繰り返す重要工程
半導体の後工程と聞くと、半導体のチップを基板に固定するダイボンディングやチップを電気的に接続するワイヤボンディング、保護するために絶縁性樹脂で全体を覆う封止、検査などを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、後工程はそれらよりも前から始まっています。その入り口となるのが「ダイシング」です。
前工程では、シリコンウエハー上に数百から数千個もの半導体回路が形成されます。しかし、この状態では、一枚のウエハー上に多数の回路が並んでいるだけで、製品として使うことはできません。そこで、ウエハー上の回路を一つ一つ切り分け、独立した半導体チップにします。この工程がダイシングです。
一見すると「ウエハーを切るだけ」に思えますが、実際には、幅数十μm程度の細い切断領域に対し、数μm単位で位置を制御する精密加工です。わずかな欠けやクラックも、後の組み立てや製品の信頼性に影響します。今回は、ダイシングの役割と工程の流れ、安定生産を支える技術について解説します。
ダイシング装置に強い日本企業
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前工程で作られるのは完成品ではない
前工程では、ウエハー上にトランジスタや配線が何層にも形成され、半導体回路が作り込まれます。しかし、この段階では、まだ多数のチップが一枚につながった状態です。
板チョコレートを想像すると分かりやすいでしょう。一枚の板を区切りに沿って割り、一片ずつに分けるように、半導体もウエハーから個々のチップを切り出して初めて、次の組み立て工程へ進めます。ダイシングの「ダイ(Die)」とは半導体チップを意味し、ダイシングは文字通りウエハーからダイを切り出す工程です。
切断する場所は自由ではありません。チップとチップの間には「スクライブライン」と呼ばれる切断用の領域があり、装置はその中央を正確に加工します。
位置がずれれば回路を傷つけ、切込みが深すぎても浅すぎても、欠けや割れ、切り残しの原因になります。このため装置には、高精度な位置決め機構、画像認識、高速回転スピンドル、高剛性ステージなどの精密技術が組み込まれています。
さらに、近年の半導体は薄型化が進み、ウエハーの裏面を研削して薄くしてからダイシングする製品も少なくありません。ウエハーが薄くなればなるほど、反りやたわみが生じやすく、搬送時のわずかな衝撃でも割れる危険が高まります。切断精度だけでなく、ウエハーを傷つけずに保持し、安定した姿勢で装置内を搬送する技術も必要です。
ダイシングは、加工とハンドリングの両方に高い精度が求められる工程なのです。
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