メカトロ機器を素早く動かしたい! LMガイドのレイアウトで変わる機械剛性:冴えない機械の救いかた(12)(6/6 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第12回は、LMガイドのレイアウトに着目。1軸アクチュエーターのフィードバック制御と機械剛性の関係を整理し、LMブロックの配置によってテーブル剛性がどのように変わり、それが位置決め動作にどう影響するのかを、計算と実験データを交えて紹介する。
LMガイド4本使いの場合
図21にLMガイド4本使いの場合を示します。図20のケースAとBを比較しても、剛性は2倍にしかなりません。ケースCとDでも、その増加は2倍にとどまります。ということは、図21右図に示すようにLMガイドの本数(図の場合は4本)を増やしても、効果はあまり期待できません。
しかし、筆者の場合、LMガイド4本使いの設計をしたことがあります。
図22に、LMガイド2本構成で、ステージが端の方にあり、Y軸テーブルを急加速した場合を示します。ステージの質量はそこそこあるので、急加速するとステージとY軸にかなりの慣性力が発生します。
この慣性力は、図22のようにY軸を変形させます。問題になったのは、ステージ端部の上下方向の変位です。精密な加工をする場合、ステージの上下方向変位はワークと加工装置との距離を変動させます。この変動量が無視できなかったため、LMガイド4本使いとしました。
しかし、4本使いの場合でも、X軸テーブルのヨーイング剛性は2倍程度にしかならない点には注意が必要です。
X軸テーブルの剛性の実験結果
図20を見て、LMブロック2個使いと4個使いでヨーイング剛性に131倍もの差があることに、「おい、ホントかよ」と思われた読者もいるかと思います。そこで、実験データを紹介します。
図23にLMガイド剛性試験の条件を示します。LMブロックは上側プレートにボルト締結されています。フォースゲージを介して上側プレートに荷重をかけ、その変位をダイヤルゲージで読み取りました。
図24にLMガイド剛性試験結果を示します。横軸に前述した計算値、縦軸に実験値を示しており、両者はよく一致しています。AB群のプロットはケースAとケースBで、LMブロックの取り付け位置をいろいろ変えて測定を行っているため、プロットは2個ではなくたくさんあります。CD群のプロットはケースCとケースDで、AB群とCD群ではばね定数が2桁近く違っていることが分かります。
これらはヨーイング剛性に関するものですが、ピッチング剛性についてもデータを測定しており、同じことが言えます。ローリング剛性に関しては実験しておりませんが、多分同じだと思います。
LMガイドを使ったXYテーブルにおいて、LMブロックのレイアウトが違えばテーブルの剛性が大きく異なることがご理解いただけたでしょうか。テーブル剛性が低いと、単に荷重に対する変位が大きくなるだけではありません。サーボモーターとボールねじを使ったXYテーブルでは、サーボ系のゲインを大きくするとサーボ系が発振しやすくなります。そのため、ゲインを大きくできず、素早い動作も期待しにくいのです。後者の方が問題は深刻だと考えます。
ここでも「失敗事例」と書きましたが、今回ご紹介した図13のレイアウトは、実際に設計して失敗したものではなく、設計しそうになった段階で事前に防いだ例です。ただし、前述した考え方で振動問題を起こした機械を救った例は、これまでにもいくつか紹介していますし、これからも紹介できるかと思います。次は、このようなヨーイング剛性を予測するXYテーブルの有限要素法解析の実例をご紹介します。
高橋は夏休みの宿題どうやったの?
図2のフィードバック系のところで、夏休みの宿題を例にしました。では、筆者である高橋の小中学生時代の夏休みでは、フィードバック系は正常に機能していたのでしょうか。少し違います。夏休みの宿題と冬休みの宿題は、通知簿をもらった終業式の日のうちに全てやってしまうので、フィードバック系は機能しませんでした。「では、作文はどうするの?」という疑問が浮かびますね。その日に書いちゃうんです。 (次回へ続く)
Profile
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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