日本におけるPFOS/PFOAの評価と管理:PFASリスクの基礎知識(4)(2/2 ページ)
第2回と第3回の記事では欧州におけるPFAS一括規制の動向やその影響について解説した。一括規制によって私たちの生活からPFASがなくなると大きな影響が出る可能性を指摘した。ここまでで「PFAS問題」の解説はいったん終了し、今回以降は「PFOS/PFOA問題」を取り上げていく。今回の第4回では日本におけるPFOS/PFOAの健康影響評価と水中の基準値について解説する。
基準値を超過した場合のリスクをどう考えるか
PFASに関しても他の化学物質の事例と同様に、「基準値の○○倍検出」などがニュースの見だしとなることが多い。しかしながら「○○倍」という数字から判断できることはほとんどない。基準値を超過した際に、実際に影響が出るまでにはどれくらいの余裕があるかを知るには「曝露マージン」というリスク指標が有用である。この曝露マージンは、動物実験などで得られるNOAELを体内摂取量である曝露量で除して算出する。ここでは実際に、2026年4月(基準値順守の義務化開始)以前に基準値を超えた飲料水を飲んでしまった場合のリスクを試算してみよう。水道水中のPFOS濃度が、日本の基準値(PFOS/PFOAの合計50ng/L)の3倍だったと仮定する。この場合の曝露マージンを計算してみると85となる(図2)。
(1)(2)基準値50ng/Lの3倍のPFOSを含んだ水(150ng/L)を飲んだと仮定する
(3)体重50kgの人が一日に2Lを飲み続けた場合、PFOSの一日当たり曝露量は
150(ng/L)×2(L)/50(kg体重)=6(ng/kg体重)
となる
(4)この曝露量はヒトのNOAELの1/85である(85倍の曝露マージンがある)
つまり、ヒトのNOAELの推定値までまだ85倍の余裕度があることになる。だからと言って基準値を超過してもそのまま飲み続けてよいということではない。基準値以下にするための対策は必要であるが、知らずに飲んでしまったものがあとから基準値超過と分かった場合、基準値超過というだけで恐れるのではなく、このような指標によって判断することが重要である。
なお、NOAELの根拠となったラットの動物実験では、NOAELの4倍量を曝露させた場合にわずかな体重減少が見られた。ただし、PFOSとPFOAの曝露については食品、なかでも魚介類からの摂取寄与率が高いことが知られているが、日本では食品中のPFOS/PFOAに関する基準値は設けられていない。
ここまでで日本におけるPFOS/PFOAの評価と管理について解説したが、次回は欧米におけるPFOS/PFOAの評価と管理について解説する。
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