無機有機物を溶出せずPFASフリーの配管実現にめど 超純水製造向けに展開:材料技術
栗田工業は、積水化学工業の環境・ライフラインカンパニーが開発した特殊オレフィン樹脂配管材を使用することで、PFASを含まない、超純水向け配管/継手の実現にめどが立った。
栗田工業は2025年7月8日、積水化学工業(積水化学)の環境・ライフラインカンパニーが開発した特殊オレフィン樹脂配管材を使用することで、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)を含まない、超純水向け配管/継手の実現にめどが立ったと発表した。
PFASは、水や油をはじく効果を発揮する他、耐薬品性/耐熱性を有し、工業用や一般消費者向けの製品で活用されている。しかし、PFASの一部には、発がん性や子どもの成長への悪影響といった有害性が指摘されており、近年欧米を中心に水質および製造の規制が進んでいる。日本でもPFASの中でも特に有害性が指摘されているペルフルオロオクタン酸(PFOA)とペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)を対象に、水道水の水質基準化と定期的な検査の義務化が2026年度に予定されている。
PVDF配管と同等の性能
栗田工業を含むクリタグループは、PFASへの対応を水と環境に関わる社会課題の1つと認識し、事業領域におけるPFASの影響などに関する多面的な情報の収集/分析と対応の検討を進めている。顧客に対しては、PFASの分析、処理、処理材の廃棄に関する課題の解決も、技術的な知見に基づき支援している。
これらの一環として、水処理装置におけるPFASフリー部材の共同開発に取り組んでいる。具体的には、素材/成型企業やユーザー企業との対話、部材の試作に加え、クリタグループの研究開発/イノベーション創出拠点である「Kurita Innovation Hub(KIH、東京都昭島市)」で実際の水処理装置を用いた試作品の実証などを進めている。
一方、先端半導体産業では、超純水製造装置の超純水用配管などで無機物と有機物の溶出が少ない資材が求められている。そこで、栗田工業と積水化学は、無機物と有機物の溶出が少ない超純水用配管など向けの資材について検討した結果、従来の有機フッ素樹脂(PVDF)に代わる製品として、積水化学が特殊オレフィン樹脂配管材を開発するに至った。
その後、両社は、特殊オレフィン樹脂配管材を用いて試作した配管と継手の検証を進めた。2022年11月には、KIHで超純水製造装置を利用した試験を実施し、溶出性、微粒子発じん性、ガス透過性などの評価項目でPVDF配管と同等の性能を持つことを確認した。PFASフリーの実現に向け特殊オレフィン樹脂配管材の改良にも取り組んだ。そして、超純水用配管/継手のPFASフリー化にめどが立った。
今後は、海外を含む複数のユーザーの超純水製造装置に搭載する超純水用のPFASフリー配管などに、今回の特殊オレフィン樹脂配管材を導入するための準備を進めていく。半導体製造工程用の超純水を対象とした水処理装置や、他の装置、プラント全般を含む部材のPFASフリー化への貢献を視野に入れた取り組みとして、資材/成型企業やユーザーとの共同開発も推進する。
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