PFASフリーダイヤフラム弁の実証実験開始 複数の水処理装置を活用:材料技術
栗田工業は、旭有機材と共同で、PFASフリーのエンジニアリングプラスチック材を使用したダイヤフラム弁の実証実験を2025年春に開始する。
栗田工業は2025年4月4日、旭有機材と共同で、PFASフリーのエンジニアリングプラスチック材を使用したダイヤフラム弁の早期実用化を目指し、複数のユーザーの水処理装置を用いてこのダイヤフラム弁の実証実験を同年春に開始すると発表した。配管などの部材でもPFASフリー製品の開発や実証を進めていく。
ダイヤフラム弁とは、ダイヤフラムで流路を開閉する構造のバルブで、流体やガスの制御/調節に広く使用されている。水処理装置で使用されているダイヤフラム弁は、ダイヤフラム部分はゴム製、その他部材は高温に耐え得る樹脂製となっている。
PFASフリーダイヤフラム弁開発の背景
有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(Per-and PolyFluoroAlkyl Substances)を総称してPFASと呼び、1万種類以上の化学物質があるとされている。撥水性、耐熱性、耐薬品性などに優れ、半導体、自動車、電気電子機器、電池、冷凍空調機器、太陽光発電設備など幅広い産業用途に使用されてきた。しかし、自然界で分解されにくく、一部のPFASは安全性にも懸念があり、欧米を中心に健康被害や汚染リスクを抑えるための規制が進められている。
PFASの中でも、発がん性や内分泌かく乱作用が懸念されるPFOA(ペルフルオロオクタン酸)とPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)は、健康保護の観点から、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」において規制対象物質に登録されている。日本でも、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」で、PFOAおよびPFOSの製造/輸入などは禁止されている。国内では2026年度から、PFASのなかでも有害性が確認されているPFOAおよびPFOSに対し、水道水水質基準化と定期的な検査の義務化も予定されている。
栗田工業グループは、PFASへの対応を社会課題の1つと認識し、2023年10月に立ち上げたPFAS対策室を中心に、事業領域におけるPFASの影響などに関する情報の収集/分析および対応の検討を進めている。顧客に対しては、PFASの分析、処理、処理材廃棄の課題解決を、技術的な知見に基づき支援している。
これらの一環として、水処理装置におけるPFASフリー部材の共同開発に向け、さまざまな素材/成型企業やユーザー企業と対話、部材の試作を実施している他、栗田工業グループのイノベーション創出拠点である「Kurita Innovation Hub(東京都昭島市)」で実際の水処理装置を用いて試作品の実証なども行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
低環境負荷防食剤の開発にMIを活用、材料探索範囲が従来の1万倍に
栗田工業は、Fracta Leapらとマテリアルズインフォマティクスを活用した低環境負荷防食剤の開発を開始した。従来の人手による材料探索法の1万倍の範囲を高速で探索できる。IoTやAIによる排水処理監視サービスを沈殿槽自動監視サービスに採用
東芝デジタルソリューションズの排水処理遠隔監視サービスが、栗田工業の沈殿槽自動監視サービス「S.sensing TS」に採用された。日立製作所、循環型社会ソリューションの社会実装に向けた共創を開始
日立製作所は、製造業を中心とした循環型社会を見据えたソリューションの社会実装とエコシステム構築に向けた共創を開始することを、栗田工業と合意したと発表した。半導体製造の洗浄に使用する、高純度の超純水製造用機能材が北米市場で採用
栗田工業は、半導体製造工程の洗浄に使用する、高純度な超純水製造用機能材「KR-FM樹脂」が北米市場で採用されたと発表した。超純水製造プロセスに用いる際に微粒子の発塵が少なく、歩留まり向上や安定操業への貢献が期待される。半導体工場の環境負荷低減に向け、フッ素含有廃水処理薬剤を35%削減
NECファシリティーズは、ルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリングの西条工場で、フッ素含有廃水処理の環境負荷低減施策を実施した。これにより、廃水処理における処理薬剤を従来比35%、処理汚泥量を同4%削減した。