欧州のPFAS一括規制の動向と問題点:PFASリスクの基礎知識(2)(1/2 ページ)
PFASの基礎知識やリスクなどを紹介する本連載。第2回は欧州におけるPFAS一括規制の内容とその問題点ついて解説する。
PFAS連載の第1回では、「PFASとは何か?何が問題なのか?」という概要を解説した。PFASは1万種類以上に及ぶ極めて広い範囲の物質群であり、非常に有用な化学的性質を持っていることから現代社会のさまざまな分野で使用されている。PFOSとPFOAはPFASの中の代表的な物質であり、難分解性、生物蓄積性、高い毒性を持つことからすでに使用が禁止されている。
そしてPFOSやPFOAからよく似た別の物質に代替が進んだことにより、PFOSやPFOAの問題からPFASというより大きな化学物質のグループの問題に変わってきた。第2回となる本記事では、欧州におけるPFAS一括規制の内容とその問題点ついて解説する。
欧州のPFAS一括規制
欧州ではPFASの規制が検討されており、2023年にその原案が出された。経済協力開発機構(OECD)の定義を満たす1万種類以上のPFASについて原則一律に製造、使用、販売を禁止する、という衝撃的な内容であった。用途別に規制開始から最短18カ月、最長12年の猶予期間があり、この期間内でPFASを他の物質に代替することが求められる。
化学物質を規制する際は、まずはその物質のリスク評価を行い、リスクの懸念のある場合にその物質を規制する、というプロセスが通常は採用される。リスク評価では、有害性の懸念が表れるレベルを決め、ばく露量がそのレベルを超えるかどうかを判断する。この考え方は日本でも欧米でも同様である。しかしながら、PFASの場合はリスク評価のプロセスが省かれ、しかも1万種類を超える物質群として例外なく禁止措置がとられようとしているのだ。
ただし、難分解性、生物蓄積性、強い毒性という3つの特性がそろった場合には、リスク評価なし(すなわち有害性評価のみでばく露評価なし)で規制することが可能である。PFOSやPFOAなど一部のPFASについてはそのような特性が知られているが、大部分のPFASについてはそのような特性があるかどうかが分かっていない。化学物質のリスク管理の知識がある人であれば、この規制がいかに異常な状況か分かるだろう。
第1回でPFASの3つの分類について説明したが、最も風評被害を受けたのはフッ素樹脂であろう。フッ素樹脂についてはリスクの懸念もないままにPFASと一律にくくられて規制される案になっている。難分解性はあてはまるが、蓄積性や毒性は低い物質群である。リスク評価をしてから規制の判断をしても遅くはないだろう。PFASの定義をしたOECDも、全てのPFASが同様の性質やリスクを有するわけではないとしており、欧州の一律規制のような扱いをけん制しているともとれる。
2023年にはパブリックコメントの募集が実施されたが、さまざまな業界から5000件以上のコメントが提出され、日本からのコメントも多数あった。現在も規制案の審議が続いており、今後数年以内に規制開始という予定になっている。
本稿執筆中の2026年4月時点ではフェーズ2において、最初のパブリックコメントの結果を踏まえて審議が行われ、SEAC(社会経済性分析委員会)による意見案へのパブリックコメントが実施中。
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